「3Dデータを使い倒す」――3D CADベンダー各社の展示から見えた共通メッセージものづくり ワールド[東京]2024

「第36回 設計・製造ソリューション展」に出展していた、オートデスク、ソリッドワークス・ジャパン、PTCの販売代理店である旭エンジニアリングの展示ブースの模様を紹介する。

» 2024年07月09日 06時30分 公開
[八木沢篤MONOist]

 「第36回 ものづくり ワールド[東京]」(会期:2024年6月19〜21日/会場:東京ビッグサイト)の構成展の1つである「第36回 設計・製造ソリューション展」では、3D CADベンダー各社が展示ブースを構え、自社ソリューションなどを訴求していた。

 当然ながら、各社で訴求商材は異なるが、近年のプラットフォーム戦略やAI(人工知能)活用などの面で似たような動きも見られる彼らの展示から、共通するメッセージを感じ取ることができた。それは「3Dデータを使い倒す」だ。

 本稿では、オートデスク、ソリッドワークス・ジャパン(※注1)、PTCの販売代理店である旭エンジニアリングの展示ブースの模様を簡単に紹介する。

※注1:ソリッドワークス・ジャパンは、2024年7月1日をもって、仏Dassault Systemesの日本法人であるダッソー・システムズに経営統合されている。事業はダッソー・システムズに継承され、引き続き国内でのSOLIDWORKSブランドの展開に注力していくという。なお、本稿では展示会出展時の名称(ソリッドワークス・ジャパン)を用いている。

デジタルツイン構築に必要なものは全て「PDMC」に入っている

 オートデスクは「データで切り拓く未来の製造業」をスローガンに掲げ、設計だけにとどまらない、3Dデータを起点とするさまざまな業務活用や課題解決アプローチを提案。併せて、製造業向けクラウド「Autodesk Fusion」やジェネレーティブデザインに代表される「Autodesk AI」の活用事例なども紹介していた。

 例えば、3Dデータ活用の一例として、3Dスキャンした点群データとBIMや設備の3Dデータを統合してデジタルツインを構築し、設計した装置/設備などの搬入、挙動や干渉などの検証、確認に役立てるデジタルツインファクトリーを提案していた。

「デジタルツインファクトリー」の構築に関する展示デモを行っていたオートデスクのブース 「デジタルツインファクトリー」の構築に関する展示デモを行っていたオートデスクのブース[クリックで拡大]

 「デジタルツインの構築というと非常に大変なもの、大手企業の一部が取り組んでいるものと捉えられがちだが、製造業向け総合パッケージの『Autodesk Product Design&Manufacturing Collection』(以下、PDMC)であれば、3D CADソフトウェアの『Autodesk Inventor』、3Dモデルレビューソフトウェアの『Autodesk Navisworks』、3Dスキャンソフトウェアの『Autodesk ReCap』など、デジタルツインを構築するために必要なツールが全てそろっている。実は知られていないことも多い。既にPDMCを導入しているのであれば、ぜひ余すことなく活用してもらいたい」(オートデスクの説明員)。

3Dデジタル上に製造現場を可視化し、問題点の早期発見へ

デジタルマニュファクチュアリングソリューションを訴求するソリッドワークス・ジャパンの展示ブース デジタルマニュファクチュアリングソリューションを訴求するソリッドワークス・ジャパンの展示ブース[クリックで拡大] 出所:ソリッドワークス・ジャパン

 ソリッドワークス・ジャパンの展示ブースでは、ダッソー・システムズが提供するクラウドイノベーション基盤「3DEXPERIENCEプラットフォーム」との連携により、「SOLIDWORKS」の機能を大きく拡張する「3DEXPERIENCE Works」ポートフォリオを全面的に訴求していた。

 そのうち、製造(Manufacturing)/生産(Production)向けの提案として、3DEXPERIENCEプラットフォーム上のSOLIDWORKSデータを直接利用し、MBOM(製造部品表)の作成や工程/作業手順の検討、ロボットシステムの検討などが行えるデジタルマニュファクチュアリングソリューションを訴求していた。ロボットシステムの検討では「3Dのデジタル空間上で、SOLIDWORKSで設計した産業用ロボットの3D CADモデルを、実際のPLCの制御プログラムで動かすことができ、設備を導入する前段階で挙動や干渉などを検証して問題点を早期に発見し、生産現場の立ち上げを支援する」(ソリッドワークス・ジャパンの説明員)という。

デジタルの力でフィジカルの世界を変革

 旭エンジニアリングの展示ブースでは“デジタルの力でフィジカルの世界を変革する”アプローチとして、PTCが提供する3D CADの「Creo」「Onshape」、ALM(アプリケーションライフサイクル管理)の「Codebeamer」、PLM(製品ライフサイクル管理)の「Windchill」「Arena」、IoT(モノのインターネット)プラットフォームの「ThingWorx」、SLM(サービスライフサイクル管理)の「ServiceMax 」、AR(拡張現実)ソリューションの「Vuforia」をそれぞれ訴求していた。

デジタルスレッド戦略を強化するPTCの製品ポートフォリオ デジタルスレッド戦略を強化するPTCの製品ポートフォリオ[クリックで拡大] 出所:旭エンジニアリング

 「PTCはデジタルスレッド戦略を強化しており、設計から生産、運用、サービスなどの各プロセスにおける強力なソリューションを取りそろえ、追跡可能で一貫性を持ったデータ管理、それに基づくコラボレーションの実現を支援している。こうしたデジタルスレッドの基盤として重要な役割を果たすのがPLMの『Windchill』だ」(旭エンジニアリングの説明員)という。なお、PTCは既存ソリューションのSaaS(Software as a Service)対応/クラウド基盤「Atlas」プラットフォーム統合も進めているが、従来のオンプレミス版ソリューションの提供も継続的に行っていく方針だ。

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