さらに、血圧計の組立ラインでは省スペース化による生産性向上とGHG削減にも取り組んだ。省スペース化においては、空調電力がポイントとなった。松阪事業所では2023年実績で空調エネルギーの使用量が工場全体の4分の1にあたる500MWhを記録している。
空調を使用するスペースの延べ面積は3棟合わせて8200m2であり、1m2当たり約60kWhとなる。この空調が必要な空間を削減することができればエネルギーを減らすことができることから、工場ではそれまで42m2あった血圧計組み立てラインの空間距離を半分にするなどの取り組みを同社のFA技術を駆使することなどで実施した。
その結果、ラインの長さは30m2に短縮し、省スペース化が図れ、空調エネルギーの30%削減に成功した。また、省スペース化した生産ラインは作業者の無駄な動きがなくなり、生産量は1.3倍向上した。この取り組みでエネルギー生産性は1.85倍、製品1台あたりのGHG排出量も45.9%減となっている。
さらに松阪事業所では「All in half」の考え方を部品調達にもあてはめた。これまで海外から調達していた部品を国内移管、さらに近隣のメーカーに依頼することで、海上輸送や国内輸送の距離を短縮し、部品調達に関するGHG排出量を3.4t(トン)削減するという。
この取り組みは梱包資材の削減にもつながった。例えば、血圧計の筐体を海外から調達する際は、耐久性の高い段ボールに厳重な緩衝材とともに入れて運ぶ。輸送先で開梱された段ボールは最終的にごみとして処分されるが、その量は年間90tに及んでいた。そこには一時保管するスペースや処分するコストも必要になる。
そこで松阪事業所では近隣メーカーだからこそ可能な通い箱を使った輸送を開始。さらに通い箱を現場まで持ち込むダイレクト配当を実施することで荷降ろしのための空間、時間、停滞する部品在庫を減らしエネルギー生産性が向上した上、90tの段ボール使用をなくすことに成功した。「これまで国内調達は高いという固定概念があったが、GHG排出量や廃棄物の削減、エネルギー生産性の向上に連結できる結果となった」(曽根氏)。
松阪事業所では、こうした成功事例を生かし工場全体を最適化する方針だ。また、オムロンでは幅広い製品ラインアップと高い技術力により、成功事例を積み上げて企業の生産性向上およびエネルギーの消費削減に貢献していく。
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