Lunar LakeのGPUは、Arcの「Battlemage」(開発コード名)世代に当たる「Xe2」が採用される。Meteor Lakeで採用したArcは、「Alchemist」(開発コード名)世代の「Xe」だったが、これも次世代に刷新されることになる。
Xe2では、ベクトルエンジンである「XVE」の幅を8ビットから16ビットに広げて演算量を減らすとともに、AI処理向けのマトリクスエンジン「XMX」をXVE1個に付き1個を対応させるなどさまざまな改良を図っている。その結果として、グラフィックス処理性能はMeteor Lakeと比べて1.5倍になっている。また、GPU単体でのAI処理性能は67TOPSを確保した。さらに、Arcは映像コーデックの「AV1」にハードウェアベースで対応していることが評価されていたが、Xe2ではH.266に当たる「VVC」にも対応する予定である。
Lunar Lakeは、次世代のAI PCへの対応に向けてAI処理性能で最大120TOPSを実現することが最大の特徴になっていることは冒頭に述べた通りだ。安生氏は「ただし、AI処理をCPU、GPU、NPUのどれで行っているのかを調査したところ、GPUが最も多いものの、複数を組み合わせて使うのが一般的であるという傾向が見えてきた」と述べる。
Lunar Lakeの最大AI処理性能120TOPSの内訳は、CPUが5TOPS、GPUが67TOPS、NPUが48TOPSとなっている。それぞれ役割も異なっており、CPUは軽負荷のAIワークロード、GPUはゲーミングやクリエーター向けAI、そしてNPUはCopilot+ PCの機能として注目されているAIアシスタントとクリエイティブ制作に割り当てられる想定になっている。
Lunar Lakeで採用される最新のNPUである「NPU 4」は、この用途に対応できるようにLLM(大規模言語モデル)やトランスフォーマーモデルの処理に最適化されており、高密度のベクトル演算と行列演算を高効率に処理できるようになっている。NPUのエンジン数は、Meteor Lakeの「NPU 3」と比べて3倍の6個に増加している。
NPU 4のAI処理性能は、NPU 3と同じ消費電力で2倍、ピーク性能で4倍まで伸びた。また、画像系の生成AIであるStable Diffusionを用いたベンチマークでも、Lunar LakeはMeteor Lakeを上回るスコアを記録している。
これらの他にも、AI処理などで多くなりがちなDRAMへのアクセスを削減する仕掛けとして、メモリコントローラー内に「メモリー・サイド・キャッシュ」と呼ぶ容量8MBのキャッシュを搭載した。安生氏は「AI処理ではCPUやGPU、NPUの間でデータ共有するためにDRAMへのアクセスが増加し、これが消費電力を大幅に増やす要因になる。メモリー・サイド・キャッシュはDRAMへのアクセスを減らす効果が大きく、プロセッサの消費電力を最大で40%削減できる」と語る。
フラグシップをうたうLunar Lakeでは、Wi-FiについてもWi-Fi 7の機能を内蔵する予定になっている。セキュリティエンジンも新しくなるなど、Meteor Lakeから大きなジャンプアップを果たすことになりそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.