キヤノンは第6世代ガラス基板に対応したFPD露光装置の新製品として「MPAsp-E1003H」を2024年6月に発売する。
自動車の多機能化で需要が高まる大型ディスプレイ。デザイン性の向上で異形ディスプレイを採用する例も増えている。操作性や画質への要求が高まっており、生産性と性能を両立する製造装置がカギを握る。
そこでキヤノンは2024年6月に第6世代ガラス基板に対応したFPD(フラットパネルディスプレイ)露光装置の新製品として「MPAsp-E1003H」を投入。スマートフォン向けのディスプレイを製造しているユーザーも大型ディスプレイを製造できることを訴求する。
近年、自動運転技術の進展やEV(電気自動車)の市場拡大により、多様な車載用ディスプレイの需要が高まっている。車載向けやスマートフォン向けのディスプレイの製造では、薄型、軽量と高精細を両立する品質を実現しながら、効率的に量産を行う高い生産性が求められている。MPAsp-E1003Hは、露光幅の拡大による高い生産性と新技術による重ね合わせ精度を両立することで、ディスプレイ製造の効率化に貢献する。
「スマートフォン向けのディスプレイを製造しているユーザーに対して、MPAsp-E1003Hを活用することで車載向けの大型ディスプレイも作れるようになるという提案だ。車載向けのディスプレイに対する要求は厳しくなっており、高精細のスマートフォン向けディスプレイを生産しているラインでないと対応できなくなってきている」(キヤノン)
大型テレビなどの65型パネルを一括で露光可能な第8世代ガラス基板向け「MPAsp-H1003H」の投影光学系を搭載したことにより、1.5μm(L/S)の高解像力で一度に露光できる幅を約1.2倍に拡大。1枚のガラス基板につき、従来6ショットの露光が必要であったスマートフォンなどの製品は4ショットでの露光が可能となった他、車載用途に使われる横長の大型特殊ディスプレイもつぎ目なく2ショットで露光できる。「ショット数が減ればアライメントの時間も短縮することができ、より生産性の向上につながる」(キヤノン)
第6世代基板対応の「MPAsp-E813H」と同じアライメント方式を採用。新開発の非線形補正REI(Real-Time Equalizing distorted Image)ユニットを搭載しており、REIユニットを通して光のゆがみを補正し、露光幅を拡大しても±0.30μmという高い重ね合わせ精度を実現する。
「ディスプレイ業界では、解像力と重ね合わせ精度、生産性の3つが重要な要素となるが、特に複数の装置を使う時に重ね合わせ精度が重要になる。REIユニットを利用することで、今まで合わせられなかったような部分も精密に補正できるようになる」(キヤノン)
その他、MPAsp-H1003Hでも使われた超解像を実現する照明モード切り替え機構、露光線幅を安定させる露光スリット自動調整(SIC)機構、露光レイアウトに合わせて最適なガラス基板の向きを縦横選択可能にするユニバーサルチャックなどを踏襲して搭載している。
「今後は車載向けディスプレイの高精細化が一層進展する。これまではメーターや時間などを表示すればよかったのに対して、これからは高精細な地図や動画などもディスプレイに表示するなど、スマートフォン並みの性能が求められると考えている」(キヤノン)
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