キヤノンおよびキヤノンマーケティングジャパンはプライベートイベント「Canon EXPO 2023」で最新半導体製造装置「FPA-1200NZ2C」を実寸大パネルを用いて紹介した。
キヤノンおよびキヤノンマーケティングジャパンはプライベートイベント「Canon EXPO 2023」(基調講演:2023年10月17日/東京国際フォーラム、展示会:同月18〜20日/パシフィコ横浜ノース)において、キヤノンの最新半導体製造装置「FPA-1200NZ2C」を実寸大パネルを用いて紹介した。
会場の入り口付近で来場者の注目を集めていたのが、FPA-1200NZ2Cの寸法(幅2700×奥行660×高さ2830mm)を2次元で忠実に再現したパネルだ。
FPA-1200NZ2Cは従来のように光で回路を焼き付けるのではなく、ハンコのようにパターンを押し付けて回路を形成する、ナノインプリントリソグラフィー(NIL)技術を採用した半導体製造装置となっている。
基本的な仕組みとしては、ディスペンサーを用いて液滴化したレジストをウエハー上に吐出し、回路パターンが形成されたマスクを押し当ててレジストを充填。マスクとウエハーの位置合わせを行い、UV(紫外線)光でレジストを硬化させて回路パターンを形成し、硬化したレジストをウエハー上に残してマスクを引き上げる。
必要な箇所に最適な量だけ行うレジストの吐出にはキヤノンがプリンタで培ったインクジェット技術が生かされている。マスクを押し当てたり、引き上げたりする際にも、圧力をかけてマスクの形状をコントロールすることでマスクを破損しないように制御。下の層の回路パターンとの位置合わせでは1nm以下の精度で位置を計測、補正し、寸分たがわず重ね合わせる技術や、下の層の回路パターンのゆがみをレーザー照射でウエハーを熱変形させることで位置を合わせる独自のマッチングシステムを開発した。
NILが3次元の回路パターンも1回で形成できるため従来に比べてコスト削減につながる他、線幅15nmのパターン形成時に必要な電力を比べるとEUV(極端紫外光)露光に比べて10分の1になるという。
回路パターンの形成以外にも微細光学装置にも適用が期待されており、nmサイズの微細構造で光を制御するメタレンズの製造などにも活用できる。
巨大な半導体製造装置を仮想空間に再現し、MR(複合現実)デバイスを通して来場者に内部の様子を紹介するデモンストレーションも披露した。実際に、キヤノン社内で半導体製造装置のメンテナンスのトレーニングに活用している。
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