三菱電機は2024年4月から中大型形彫放電加工機「SG70」の受注を開始した。開発背景などを聞いた。
三菱電機は2024年4月から中大型形彫放電加工機「SG70」の受注を開始した。ターゲットとしているのはEV向けの金型やタービンブレードなどだ。開発の背景にある業界動向などを聞いた。
SG70は同社独自のAI(人工知能)技術である「Maisart」を搭載している。加工中の放電パルスの状態を機械側でモニタリングし、加工の安定度を見極めながらリアルタイムに加工制御へフィードバックすることで面むらのない加工を実現。その後の磨き工程の削減に貢献する。
「われわれの一番の強みは制御技術だ。放電加工機においてAIを活用して制御までつなげるのは他社にはない技術だと思っている」(三菱電機 FAシステム事業本部 メカトロ事業推進部 放電事業推進グループ 放電加工機ビジネス統括 小薗翔太郎氏)
ストローク(X×Y×Z)は1000×700×500mm、加工槽は内寸が1500×1100mm、深さが550mmとなっている。テーブルは1300×950mm、最大ワーク重量は3000kg、タンク容量は1100(1300)l(リットル)。機械サイズは2750×3435×3030mmだ。従来機にあたる「EA28V-A(ロングストローク仕様)」と比較して、ストロークや加工槽のサイズアップを図っている。
従来、大型ワークに対応するためには剛性を高める必要があり、そのために主要構造体の鋳物なども大型化し、機械サイズが大きくなっていた。今回、三菱電機ではCAE解析などを活用して、ラム鋳物の形状を見直すことで大型化を伴わずに剛性を高めることに成功した。そのため、他社製品より省スペースながら大型ワークに対応できるようになったという。
SG70は電源に応じて2種類を展開しており、価格はSG70(GV80電源)が4000万円、(GV120電源)が4150万円(いずれも税別)となっている。2024年度が5台、2030年度には約30台の販売を目標にしている。
同社の形彫放電加工機の中で、「SGシリーズ」はボリュームゾーンをカバーしており、その中でSG70はEV(電気自動車)向けの金型や発電機で使われるガスタービンなど大型ワークの加工をターゲットとしている。
グローバルで温室効果ガス削減などの環境対策として各国がEVの普及を中長期的に推進している。EVは航続距離を伸ばすために軽量化が求められており、部品点数を削減するためには、ギガキャストに代表されるように部品の一体化が必要となる。
そのため、金型業界では大型設備の導入が進んでいる。部品の一体成型や複数の製品を同時に成形する多数個取りの拡大から金型が大型化しており、それに伴い金型メーカーが競合との差別化を図るため、導入する設備も大きくなっているのだ。
また、近年、注目を集める生成AI(人工知能)は膨大なデータ計算を行い電力を大きく消費するため、電力確保が課題となっている。そこで見込まれるのが、タービン発電機の需要増加だ。タービン発電機の台数が増えれば、搭載されるブレードの数も増える。出力を高めようとすればタービン発電機自体も大型化し、ブレードも大型化する。SG70はそれらに対応するために開発された。
「既に中国の自動車メーカーから引き合いが来ている。中国では部品の一体化が進んでおり、大型機への関心は高い。またエネルギー関連の引き合いも多い」(小薗氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.