デクセリアルズが“進化を実現する”2028中計を策定、2つの成長領域で事業を拡大製造マネジメントニュース(1/3 ページ)

デクセリアルズは、2019〜2023年度の中期経営計画で課題として残った「事業ポートフォリオの拡大」と「環境変化への対応」を実現する2024〜2028年度の中期経営計画「中期経営計画2028『進化の実現』(2028中計)」を策定した。

» 2024年05月15日 05時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 デクセリアルズは2024年5月14日、東京都内とオンラインで会見を開き、2023年度(2024年3月期)連結業績や2024年度の連結業績見通し、2024〜2028年度の中期経営計画「中期経営計画2028『進化の実現』(2028中計)」について説明した。

光トランシーバー向けの新規顧客を開拓し製品の出荷を開始

 2023年度連結業績は、売上高が前年度比0.9%減の1051億9800万円で、営業利益が同3.5%増の334億2100万円となり減収増益となった。

 2023年度における世界経済は、半導体供給不足を主な要因とするサプライチェーン問題の解消などにより回復の兆候が見られた一方で、ロシア/ウクライナ情勢に加え中東紛争などによる地政学リスクの高まりや、世界的な金融引き締めの継続などで、不透明な状況が続いた。

 同社の製品が関わるコンシューマーIT製品市場では、スマートフォン市場において欧米で出荷台数の停滞が続いたが、中国では回復基調となった。ノートPC/タブレット端末市場では前期から続く在庫調整が完了したものの、最終需要の戻りは弱く厳しい状況が継続した。

 このような経営環境の中、同社は2019〜2023年度の中期経営計画(2023中計)に基づき事業環境の変化の影響を受けにくい事業ポートフォリオへの転換に取り組んだ。新規領域では、自動車向け製品の販売を拡大するなど、コンシューマーIT製品以外の事業拡大を進め、フォトニクス領域では次世代高速通信を実現する光トランシーバー向けの新規顧客を開拓し、製品の出荷を開始した。

2023〜2024年度における主要最終製品と同社の動向 2023〜2024年度における主要最終製品と同社の動向[クリックで拡大] 出所:デクセリアルズ

 既存領域でも、テクノロジーの進化を先回りした製品の開発/提案に取り組み、精密接合用樹脂や粒子整列型異方性導電膜(ACF)などの高付加価値製品の販売を拡大した。

 同社 執行役員 経営管理本部長の寺下和良氏は「(2023年度の)上期は在庫調整の影響を受け、下期も市場全体の回復は緩やかだ。当社では、スマホ向けのACFやセンサーモジュール向けの製品など、高付加価値製品が伸長した」と振り返る。

セグメント別では電子材料部品セグメントが好調

 セグメント別では、光学材料部品セグメントの売上高は同7.1%減の514億5300万円で、営業利益は同10.7%減の160億4000万円を記録した。同セグメントでは、光学フィルム事業で、車載ディスプレイ向け反射防止フィルム製品の売上高が増加したものの、ノートPC用ディスプレイ向け反射防止フィルム製品の売上高が減少した他、蛍光体フィルム製品の売上高減少により、減収減益となった。光学樹脂材料事業では、精密接合用樹脂における大手スマートフォン向け製品の数量増加などにより増収増益を達成した。

2023年度における光学材料部品セグメントの概況 2023年度における光学材料部品セグメントの概況[クリックで拡大] 出所:デクセリアルズ

 電子材料部品セグメントの売上高は同5.6%増の543億8700万円で、営業利益は同19%増の191億6700万円となった。同セグメントでは、接合関連材料事業で、ノートPC向け汎用品などの数量が前年度並みとなり、営業利益も前年度並みとなった。

 異方性導電膜事業では、主にスマートフォンのハイエンドモデルにおいてディスプレイ向け粒子整列型ACFが堅調に推移した他、カメラなどの各種センサーモジュール向け形状加工ACFの販売拡大で増収増益を記録した。表面実装型ヒューズ事業では電動工具向けで顧客の在庫調整に伴う数量減が発生し減収減益。マイクロデバイス事業でもプロジェクター需要の回復が弱く数量減により減収減益となった。光半導体事業では中国における工場投資および移動体通信事業者の投資の減速で減収減益に至った。

2023年度における電子材料部品セグメントの概況 2023年度における電子材料部品セグメントの概況[クリックで拡大] 出所:デクセリアルズ

2024年度は高付加価値製品の販売拡大により増収見込み

 2024年度連結業績は1ドル140円の為替レートを前提として売上高は1070億円となる見通しだ。2024年度は、世界的な景気低迷およびインフレが継続する中、同社では、タブレット、スマートフォン、自動車は前期並みの需要に止まり、ノートPCは買替え需要などで上向くと見込んでいる。

2024年度における連結業績の見通し 2024年度における連結業績の見通し[クリックで拡大] 出所:デクセリアルズ

 このような状況を踏まえて、同社は、ハイエンドモデルのスマートフォンにおいて、センサーモジュール向けに精密接合用樹脂や形状加工ACF、ディスプレイ向けに粒子整列型ACFの販売拡大が継続するとともに、車載ディスプレイ向けおよびノートPC向けに反射防止フィルムも伸長するとみている。これら高付加価値製品の販売拡大により、タブレット端末とノートPCのハイエンドモデル向け製品の減収をカバーし、全体で増収する見通しだ。営業利益については、高付加価値製品の伸長により固定費の増加を吸収し、為替と会計基準変更の影響を除くと、増益となるとみている。

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