ホンダがカナダにEV製造拠点を新設、バッテリーは自社生産電動化(2/2 ページ)

» 2024年04月26日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
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バッテリーを自社生産する理由

 バッテリーの自社生産に乗り出すに当たって、材料メーカーとともに部材の生産拠点も設ける。正極材に関してはPOSCO Future Mが、セパレーターは旭化成がパートナーとなり、共同出資で正極材やセパレーターの工場をそれぞれ建設することを検討する。カナダではバッテリーを自社生産するが、LGエナジーソリューション(米国向け)やCATL(中国向け)とのパートナーシップは継続し、既存の計画でのバッテリーの外部調達に変更はない。

 一般的に、バッテリーの生産に必要な投資は非常に大規模だ。EVの普及拡大に合わせてバッテリーの供給を拡充するには、さらに投資の負担が重くなる。そのような中でもバッテリーを自社生産し、材料メーカーとの共同出資にも乗り出すのは、電動化が進む中で重要度が増すバッテリーの全体像や勘所を把握し続けるためだ。クルマ1台に占めるバッテリーのコストは3〜4割と大きく、リソースサーキュレーションに取り組む上でも手の内に収めておく必要があった。

 また、POSCO Future Mや旭化成と共同出資で部材の工場を設けることで、安定的な調達やコスト優位性の確保、最新技術の優先的な適用などのメリットを見込む。

 今回の投資で、原材料の調達、部材やバッテリー、そしてEVの生産までのバリューチェーンを手の内化する。バッテリーの安定供給によりコスト変動への耐性を高める他、自社生産や現地調達効果によって現行のバッテリーから20%以上のコスト削減を見込む。

 使用済みバッテリーの回収や二次利用、リサイクルに関しても、ホンダのバリューチェーンに含めていくことを検討する。その中では、GSユアサが果たす役割も大きい。ホンダとGSユアサが共同出資で設立したバッテリー研究のHonda GS Yuasa EV Battery R&Dや、バッテリー生産だけでなくリサイクルの知見も持つブルーエナジーとの協力が生きるという。

 ホンダはEVをどこまで廉価にできるかが今後の電動化戦略で重要になるとみている。ただ、現状のバッテリー搭載量のままではコストを下げるのが難しいと見込み、電費の改善によるバッテリー搭載量の抑制に取り組む。電費を良好にするには、走行抵抗の低減やバッテリーの制御などさまざまなアプローチがある。バッテリーの材料や製造の“レシピ”以外にもEVを廉価にするカギがあるとホンダは考えている。

 ホンダが2024年1月のCESで披露したEVのコンセプトモデル「0シリーズ」も、同様の方針に基づいている。バッテリーの搭載量拡大にこだわらず、電費性能の高さによる「軽さ」やフロア高を抑えたEVプラットフォームによる「薄さ」、知能化による「賢さ」を重視する。

カナダの生産拠点としての強み

 カナダ オンタリオ州は、原子力や再生可能エネルギーによるクリーンエネルギーが9割を占めており、生産領域のカーボンニュートラル実現に向けて有利な立地となる。

 USMCA(米国、メキシコ、カナダ協定)の枠組みによってインフラ削減法(IRA)への対応が有利になることや、原材料や資源の面でもカナダを有望視している。インベストメントタックスクレジット(ITC)によって工場の設備や建屋への投資が優遇されることもカナダでEV向けの投資を強化するメリットだという。

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