――AIを活用した機能のお話がありましたが、「Autodesk University 2023」で発表された「Autodesk AI」とは何でしょうか?
加藤氏 Autodesk AIは、何か特定の製品やサービスを指しているわけではない。オートデスクが提供する製品やサービス、そしてAutodesk プラットフォームに組み込まれている、AIを活用した機能やテクノロジーの総称のことをAutodesk AIと呼んでいる。
製造業の製品設計向けに、Fusionでジェネレーティブデザインを提供しているが、これもAutodesk AIの一つであり、10年以上前から、われわれはAI関連の機能を提供してきたことになる。
Fusionのジェネレーティブデザインの他にも、既存のオートデスク製品にさまざまなAI技術が組み込まれている。例えば、「AutoCAD 2024」に搭載されている「マークアップ読み込み」や「マークアップアシスト」機能もAI(機械学習)を活用した機能だ。マークアップ読み込みはPDFや紙図面からフィードバックを読み込んで、変更を自動的に図面に反映してくれる機能で、マークアップアシストは既存図面のテキストを更新し、対処済みのマークアップをフェード表示する機能である。これら機能を活用することで、設計者の手作業が減り、ミスなく注記を設定できるようになる。
このようにオートデスク製品/プラットフォームにはさまざまなAI技術が組み込まれており、意識せずとも既にユーザーの業務効率化や生産性向上に寄与している。これからAIをうまく業務に活用していこうと考えている現場でも、実はもうAutodesk AIの恩恵を受けている、といった可能性もあるかもしれない。
ちなみに、Autodesk University 2023の中では、先ほども紹介したAutomated ModelingやAutomation Drawingの他にも、AIを活用して切削加工用のツールパスを自動分析/生成する機能や、生成AI技術を活用したコンセプトデザインの探索機能などについても触れていた。Autodesk AIの開発は、研究開発拠点の「AI Lab」で行われている。冒頭に述べた通り、オートデスクはAIについても戦略的投資対象として注力しており、AI Labでは60以上もの研究論文を発表するなど、最先端のAIおよび生成AIの研究開発を進めている。
――AECO向けの「Autodesk Forma」、M&E向けの「Autodesk Flow」では、どのようなことができるのでしょうか?
加藤氏 Formaは、設計、施工、運用を担うプロジェクトチームのコラボレーションを促進するAECO向けのインダストリークラウドだ。例えば、建物や街並みを表現するための3Dスケッチの機能や、AIを活用した予測分析として、都市空間における太陽エネルギーの影響を解析して建物のHVAC(暖房、換気、空調)の能力や断熱の検討に役立てられる機能、さまざまな交通関連の情報に基づき詳細な騒音(ノイズ)を解析する機能など、プレビュー版を含め、急ピッチでさまざまな機能が開発されている。
さらに、サードパーティーによる拡張機能の整備も進められている他、BIMソフトウェアの「Autodesk Revit」(以下、Revit)との双方向同期を実現する拡張機能や、建築デザインなどでも利用されている「Rhinoceros 3D」との連携を可能にする拡張機能なども用意している。Formaの提供については、Fusionと同じく単体契約での利用に加え、建築設計者向けツールをセットにした「Autodesk Architecture, Engineering & Construction Collection」を導入することでも利用できる。
一方、M&E向けのインダストリークラウドであるFlowは、3D CGアニメーションや映画、ゲームなどのコンテンツ制作におけるワークフローとデータを統合して、制作チームおよびメンバー間でのシームレスなコラボレーション環境を提供するものだ。例えば、コンテンツ制作過程で生じる単純な繰り返し作業の自動化や、制作スケジュールとリソースの割り振りの最適化、ビデオ映像からの3Dアニメーション生成など、AIを活用したさまざまな機能を提供している。業務効率化や生産性向上の実現で生まれた時間を、アイデアの創出やクリエイティブな作業に割り当てることが可能となる。なお、Flowの提供に関しては、「ShotGrid」をリブランディングした「Autodesk Flow Production Tracking」を契約すれば利用できる状態だ。
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