大規模製品モデルの研究を進めるオートデスク、AIが設計業務にもたらすものとはメカ設計インタビュー(1/3 ページ)

AIが設計開発業務にもたらすインパクト、未来の設計/デザインの在り方について、Autodesk(米オートデスク) 製造業グローバルマーケット開発&戦略シニアディレクターのデトレフ・ライヒネーダー氏に話を聞いた。

» 2023年07月31日 07時00分 公開
[八木沢篤MONOist]

 現在、さまざまな業務領域においてAI(人工知能)/機械学習の活用が進んでいる。また、最近では「ChatGPT」に代表される生成AI(ジェネレーティブAI)のビジネス利用への関心も高まっており、AIの存在がより一層身近なものになろうとしている。

 設計開発の領域に目を向けてみると、CADによる設計業務をAIがアシストしてくれたり、CAEの代わりにAIが解析結果を予測してくれたりといった活用も進んでいる。

 AIが設計開発業務にもたらすインパクト、未来の設計/デザインの在り方について、Autodesk(米オートデスク) 製造業グローバルマーケット開発&戦略シニアディレクターのDetlev Reicheneder(デトレフ・ライヒネーダー)氏に話を聞いた。

Autodesk(米オートデスク) 製造業グローバルマーケット開発&戦略シニアディレクターのデトレフ・ライヒネーダー氏 Autodesk(米オートデスク) 製造業グローバルマーケット開発&戦略シニアディレクターのデトレフ・ライヒネーダー氏[クリックで拡大]

「大規模製品モデル」の研究開発に取り組むAutodesk Research

――設計開発業務におけるAI/機械学習の活用に加え、近年、生成AIへの関心も高まっています。AIに代表される先進テクノロジーに注目が集まる中、設計/デザインの未来についてどのようにお考えですか?

ライヒネーダー氏 設計開発業務におけるAI/機械学習の活用に関して、オートデスクは市場の中でいち早くジェネレーティブデザインの機能を実現し、その中で機械学習のアルゴリズムを活用してきた実績がある。

 われわれがAIのような先進テクノロジーを活用する目的は、単に設計を支援するということだけではなく、全く新しいものをより少ない時間で、よりスピーディーに設計できるようにするためだ。

 最近話題の生成AIはさらにその先にの段階に通じるテクノロジーだと考える。ジェネレーティブデザインが設計者の能力を超えた設計案を提示し、設計の可能性を広げたのと同じように、生成AIは人間の能力の限界に縛られることなく、次々と新しいものを創造していくための助けとなるだろう。

 設計開発業務において、AIという存在は新しい設計案を生み出してくれるだけではなく、その設計のどこがまずいのか? より良い設計にするためにはどうしたらよいか? といった方向性や選択肢を提示してくれるものだ。深刻な労働力不足、技術伝承の問題の解決策としてもAIの助けが今後ますます必要になるだろう。また、そのような中で、生成AIのようなテクノロジーの応用もイノベーティブな製品開発の実現に役立つのではないかと期待している。

――ChatGPTのように人間とAIとが対話しながら目的の形状を設計していくような世界は訪れるのでしょうか?

ライヒネーダー氏 「イエス」といえるが、少し違う部分もある。ChatGPTは大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)を利用した対話型の生成AIだ。人間とコミュニケーションしながらソースコードを書いたり、テキストで情報をまとめたりしてくれる。

 こうしたLLMに基づく生成AIの可能性に対し、現在われわれの研究開発組織である「Autodesk Research」では、大規模製品モデル(LPM:Large Product Model)の研究開発に取り組んでいる。LLMを用いたChatGPTが特定のトピックスに関して自然言語でやりとりできるように、LPMは設計者が求める製品が何であるかを理解し、製品の動作原理、製造方法、関連する制約などを加味して、要件に基づく全く新しい製品設計案を提示してくれるというものだ。

大規模製品モデルについて語るライヒネーダー氏 大規模製品モデルについて語るライヒネーダー氏

 LPMは、LLMと同じように膨大なデータを事前に学習する必要がある。LLMであればインターネット上の膨大なテキスト情報を用いて学習させることが可能だが、LPMは顧客が保有する全ての製品に関する情報を用い、その製品がどのような構成要素から成り、どうやって作られているかなどを学習させる必要がある。

 全ての製品に関する情報を学習させるというのは非常にハードルが高いことのように思われるかもしれない。しかし、クラウド上のプラットフォームで製品開発に関する情報を一元管理できれば、クラウドのコンピューティングリソースを用いた効率的な学習も可能となる。また、オートデスク自身もこれまで蓄積してきた膨大な数の製品開発に関する情報を持ち合わせているため、それらを活用して事前に学習できるという強みもある。

 AIの活用を考える上で、学習の効率化も重要な課題であり、よりスマートな方法の確立が常に求められる。これは一例だが、オートデスクはPwC(プライスウォーターハウスクーパース)とのAI関連の共同プロジェクトに取り組み、「Automotive Innovation Forum 2023」の場で生産時の品質問題をAIで事前に予測して特定するアプローチを発表した。その学習を行った際、実データではなく、バーチャル化された3Dモデル上で擬似的にエラーを作り出し、それらを事前学習させることで大幅な効率化を図った。これであれば実際に発生した品質問題の情報をたくさん用意する必要性やその手間もなくなる。

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