マイボトル利用の“面倒さ”を、電池レスIoTタグと自動洗浄機で変えられるか製造業IoT(2/2 ページ)

» 2024年03月28日 10時00分 公開
[池谷翼MONOist]
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バッテリーレスのRFIDタグを採用した理由

 実証実験を通じて目指すのが、マイボトルを繰り返し利用する習慣の定着化だ。プラスチックごみ削減の観点から、マイボトルの利用に対する社会的な関心が高まっている。ただ、象印マホービンの調査では、「マイボトルを持っている」と回答した人の割合は全体の約73%に及んだが、「毎日使用している」としたユーザーは約18%にとどまっている。さらに「使用していない」というユーザーが約51%となるなど、所有率と使用率の間にギャップが存在し、マイボトルの利用が習慣化、定着化していない様子がうかがえる。

 この理由として、象印マホービン 新事業開発室長の岩本雄平氏は「大まかに分けると、マイボトルの持ち運びが面倒、使用後に洗うのが面倒、容器に入れる飲み物を用意するのが面倒という3つの問題に集約される」と説明する。そこで今回の実証実験では、マイボトルを手軽に洗浄できる環境の提供と、マイボトルの使用を「環境貢献度」として可視化し継続利用を促す仕掛けの構築により、マイボトル利用の習慣化が促進されるかを検証する。

 今回の実証実験で用いられているWiliot IoTピクセルは、イスラエルのスタートアップであるWiliotが開発したRFID製品だ。周囲の電波を利用して発電するエナジーハーベストの仕組みを採用しており、バッテリーレスでBluetooth通信を行える。

Wiliot IoTピクセルの外観。ステンレス キャリータンブラーの蓋部分のシール裏に貼り付けている Wiliot IoTピクセルの外観。ステンレス キャリータンブラーの蓋部分のシール裏に貼り付けている[クリックして拡大]

 今回の実証実験のような内容であれば、一般的なRFIDタグでも同様のことは可能だ。しかし、サトーホールディングス ビジネスイノベーション統括の熊林知之氏は「Wiliot IoTピクセルであればマイボトルの利活用の情報を個人単位で取得でき、また通信インフラの整備状態にかかわらず、スマートフォンがあればデータが取得できる。実証実験後の展開も見据えて採用した」と説明する。

 熊林氏は今回の実証実験を通じて、「Wiliot IoTピクセルは専用の通信環境がない店舗や工場などの場所でも、Bluetooth通信でデータを取得できる。今回の実証実験は、そうした場所でも利活用の情報を取得できるようにするための、第一歩目の取り組みになる」と説明した。

マイボトル洗浄機は大阪・関西万博にも設置

 マイボトル洗浄機は象印マホービンが2021年から、精密切削加工を手掛ける中農製作所と共同での開発を進めている装置だ。

 ボトルを蓋部分と本体部分に分解して洗浄機の所定の場所に格納し、ボタンを押すことで洗浄を開始する。水によるゆすぎに加えて、オゾン水を使った除菌工程もある。象印マホービンは、マイボトル洗浄機を1日の使用でついたボトルの汚れを約20秒間で落とせる「簡易洗浄機」と位置付けている。茶渋などのこびりついた汚れを除去することは難しい。洗浄に際して、洗剤は使用しない。主に、オフィスやカフェ、ホテルロビーなどでの活用を見込む。

マイボトル洗浄機の外観 マイボトル洗浄機の外観[クリックして拡大]
ボタンを押して洗浄を開始する ボタンを押して洗浄を開始する[クリックして拡大]

 実用化に向けて大学構内やカフェ、シェアオフィスなどで実証実験も進めている。2025年に開催予定の「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」で、運営参加特別プログラム「Co-Design Challenge」にも採択されており、万博会場に10台程度設置する予定だ。

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