会見では山善が国内の中小製造業、大手製造業の約1000人を対象にインターネットで行った生産性、課題についての意識調査の結果も報告された。そこでは日本の製造業の労働生産性について多くが危機感を抱いている一方で、中小製造業では実際に対策に移せていないという割合も高かった。
その点について西岡氏は「デジタル化やDXと大上段に言われると構えてしまうが、要はカイゼン活動だ。情報の流れの見える化をデジタルの力を借りて行うことだ。例えばExcelにあるデータをしっかりと整理整頓することからでも十分といえる。ただ、その先に何があるのか分からないと、カイゼン疲れも起こる。しっかりと収益に変えていくシナリオを経営トップやサポート人材が示すことでこのカイゼンが意味を持って大きな流れになる」とアドバイスする。
人、ブランド、業界づくりに特化したCOBAを立ち上げ、運営する草場氏は「今までは『量』の時代だった。1を10にする時代で成長してきたのが日本のモノづくりだ。それを支えてきた人たちはもう高齢で、技術、ノウハウは属人化しているため、間もなく消えようとしている。技術、ノウハウを見える化するなど対策は打ちたいけれども、現場とデジタルの両方を知った若い人材が入ってこない。必要性は感じているが、先送りしている経営者がほとんどではないか」と現場ならではの危機感を示す。
西岡氏は「日本のモノづくりを変えるのは、中小中堅製造業だと思う。これらの企業はモノづくりの土台、裾野を広げていくことが大事で、そのためにはそれぞれの企業が縦系列でつながるのではなく、同業他社も含めて横にネットワークとしてつながっていくことだ。これをデジタルで行えば、時間と場所を簡単に超えることができる」と語る。
ただ、コストもリソースも限られている中小製造業にとって、具体的な対策を進めるのは容易ではない。
藤川氏は「人手不足の中で事業や技術も継承させなければならない。営業やデジタルの人材も不足しているし、コストもかけられない。それぞれの課題に対しては、探せば一つ一つの解決策はあるが、あそこに行けば何かが分かるという総合的な窓口、サポートが必要ではないか」と述べる。
草場氏も「システムを導入してもフルに活用しているところは少ない。それは現場にシステムの良さが浸透し切れていないからだ。現場とシステム、アナログとデジタルをつなぐホームドクターのような存在が必要だ。そこがはまれば、一気に進むようになる」と話す。
藤川氏は「われわれが提供するゲンバトは、一気にデジタル化を進めるものではない。まず半歩先に進んで、そこができたら、またはさらに半歩進むという形で、ステップバイステップで取り組んでいただけたらと思う」 と期待する。
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