2024年のCESでは水素関連の展示や発表も多くみられました。多くの企業が次世代を見据えて水素活用を前面に打ち出しています。その中でも特に目立っていたのがヒョンデグループです。2024年1月8日のプレス発表(※4)で紹介されたFCVだけでなく、ブースでは、水素の生産技術、水素工場、水素を動力とする多様な産業用のモビリティや機械など、さまざまな水素技術をアピールしていました。
※4:Hyundai Motor Company プレス発表
米国の大型トラックメーカーPACCAR(パッカー)は、トヨタ自動車の北米部門のトヨタモーターノースアメリカと協業して開発/生産する燃料電池トラックを展示しました。トラックのEV化も進んでいますが、より長距離を走る必要がある商用車については、水素も有力な選択肢になるといわれています。このトラックの走行距離は450マイル(約724キロ)で、一般的なEVを上回る長距離を一回の充填で走行できます。
DOOSAN(トゥサン)も水素トラクターや水素バイクなどを展開しています。水素技術も自動車だけでなく、多様なモビリティへと展開していく兆しが見て取れました。
温室効果ガスの削減に向けて、エンジンによる燃焼の次に重要なのが、自動車部品/素材の生産工程における対策です。今回のCES 2024でも自動車部品や素材のサステナビリティに関する技術が展示されていました。
パナソニックのブースでは、サステナビリティをテーマとした区画を設けていました。その中にパナソニックグループが提供する、EV向けの車載用円筒形リチウムイオン電池の展示がありました。パナソニックはテスラとともにテキサスでリチウムイオンバッテリーのギガファクトリーを稼働していますが、カンザス州で新たなバッテリー工場の建設を進めており、2024年中に生産を開始する予定です(※5)。
※5:パナソニック プレス発表
米国では、バイデン政権による「インフレ抑制法(IRA)」が成立し、EVと電池については生産地や調達網が細かく規定されました。EV生産で税額控除の上限値である最大7500ドルの控除を受けるには、電池製造に必要な50%以上を米国や自由貿易協定(FTA)締結国から調達しなければなりません。こうした背景から、パナソニックでは米国で生産したバッテリーの需要が高まると考えているようです。
KIAのブースでは、EV「EV9」の内装に使われているリサイクル素材の技術を展示していました。EV9ではバイオプラスチック、バイオフォーム、バイオペイント、ペットボトル由来のファブリックなど、多様なリサイクル素材の内装への活用が進められているようです。
脱炭素化は自動車業界にとって100年に一度の大変革であり、産業そのものを変貌させてしまう大きなうねりとなっています。電動化はもはや前提となり、EVの普及を進めるために、いかに新たな付加価値を商品に加えていくかに焦点が移りつつあります。
また、次世代の選択肢として水素活用への注目も高まっています。自動車という最終製品だけでなく、部品/素材も含めたバリューチェーン全体で脱炭素化/サステナビリティを推進していくことの重要性も問われていると言えます。
ボルボグループのNiklas Wahlberg氏はカンファレンスセッションで、「自動車業界の脱炭素化を進めていくのは自動車メーカーだけでは難しく、行政、部品/素材メーカーなどさまざまなステークホールダーとのパートナーシップや協業が重要だ」と語っていました。
Salesforce(セールスフォース)も温室効果ガス排出量の管理ツールとして「Net Zero Cloud」を自動車業界向けに提供していますが、ITベンダーも含めた多様なパートナーシップの重要性が増していくと考えます。
総合電機メーカーに勤務後にMBAを取得。その後、コンサルティング会社やITベンダーに勤務した後にセールスフォースジャパンに移籍。セールスフォースジャパンでは、主に製造・自動車・エネルギー業界の専門家として、顧客支援、社内教育、セールスプレイ開発、情報発信などの事業開発の業務に従事している。
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