電動化の先へ、自動車業界で加速する脱炭素技術開発 CES 2024レポート(後編)世界の展示会で見たモノづくり最新動向(2)(1/2 ページ)

この連載では、MONOistとSalesforceのインダストリー専門家が協力して、世界各地の展示会から業界の最新トレンドをお届けします。前回に続き、2024年1月9日〜12日にかけて米国のラスベガスで開催されたCESより、第2弾では自動車業界の脱炭素化のトレンドについて紹介します。

» 2024年02月20日 10時30分 公開

 バイデン政権のもとで米国がパリ協定に復帰したことで、全世界、全産業が2050年のネットゼロに向けて動き始めました。この流れは自動車業界においても例外ではありません。環境省の調べ(※1)では、日本の温室効果ガス排出量の約17%が運輸部門から排出されているとされており、ネットゼロの実現に向けて、自動車業界の対策は重要な位置付けにあります。

※1:環境省、国立環境研究所「2021年度温室効果ガス排出・吸収量(確定報)概要」

 自動車業界において、温室効果ガス排出量の比重が最も大きいのは、GHGプロトコルでスコープ3に当たる車両走行時のガソリン燃焼です。その次が自動車部品/素材の製造工程です。

 CES 2024でも、自動車メーカー、部品メーカー、素材メーカー、その他モビリティ企業において、脱炭素化に関するさまざまな展示がありました。今回のCES 2024の脱炭素化のトレンドをまとめると、(1)全てのモビリティの電動化、(2)水素燃料の活用、(3)自動車部品/素材のサステナビリティの、大きく3つになると考えられます。その中からいくつかの具体的な展示を紹介します。

⇒CES 2024レポートの前編はこちら!

全てのモビリティの電動化

新グローバルEV「Honda 0シリーズ」を発表する三部社長(ホンダブースにて) [クリックして拡大] 筆者撮影

 ホンダは、新グローバルEV「Honda 0シリーズ」を発表しました。コンセプトモデルである「SALOON(サルーン)」、「m-HUB(スペース ハブ)」に加え、次世代EV向けの新しい「Hマーク」も初公開しました。

 ホンダでは2050年に、同社が関わる全ての製品と企業活動を通じたカーボンニュートラルを目指しています。その実現に向け、四輪車では2040年までにEV/FCV(燃料電池車)販売比率をグローバルで100%とする目標を掲げ、電動化に取り組んでいます。筆者も参加したプレス発表(※2)は、三部敏宏社長が自らステージに登壇するなど、ホンダのEV推進に関するコミットメントが伝わってくる内容でした。

※2:ホンダ ニュースリリース

 ソニー・ホンダモビリティの自動運転EV「AFEELA(アフィーラ)」は、ソニーとホンダ2社のタッグによって、最高レベルの自動運転、車内エンターテインメントを提供しようとしています。もはやEVであることは当たり前で、いかに独自の付加価値をつけるかがポイントになりつつあると言えます。

ヘッドライトのMedia Barディスプレイ(ソニー・ホンダモビリティブースにて)[クリックして拡大] 筆者撮影

 AFEELAには、映画、音楽、ゲーム、カーオーディオ、イメージセンサーなど、ソニーグループが保有するコンテンツや技術が活用されています。ヘッドライト部分にも「メディアバー」と呼ばれるディスプレイが搭載されており、スマートフォンアプリで、このディスプレイに表示するイメージが選択できる仕組みです。その日の気分やドライバーの嗜好に応じて、ヘッドライトやダッシュボードのイメージをカスタマイズできるなど、遊び心に満ちたソニーらしい機能が提供されていました。

 KIA(起亜自動車)はCES 2024のプレス発表(※3)で、“Beyond Mobility”というコンセプトのもと、モビリティの先を目指す「Platform Beyond Vehicle(PBV)」事業を発表しました。ブースでは、モジュラー構造のコンセプトカーを展示していました。用途に合わせて後部を交換できるモジュラー型EVです。ライフスタイルに合わせて、ワンボックス型、トラック型など、車両の後部をモジュールとして取り換えられる仕様になっています。いわゆる電動化だけでないユニークな価値が提案されている点が印象的でした。

3:KIA Corporation プレス発表

KIAのモジュラー構造のコンセプトカー(KIAブースにて)[クリックして拡大] 筆者撮影

 それ以外にもさまざまな電動モビリティが紹介されていました。バイク、スクーターはもちろんのこと、キャンピングカー、ベビーカー、空飛ぶクルマまでが紹介されており、ほぼ全てのモビリティの電動化が進んでいると印象付けていました。このように、電動化はすでに前提となりつつあり、各社がその上にどのような付加価値を盛り込んでいくかが、今後の焦点になってくると考えられます。

XPENG eVTOL Flying Car (空飛ぶEV)(XPENGブースにて)[クリックして拡大] 筆者撮影
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