本連載では、新しい領域にチャレンジする中小製造業の“いま”を紹介していきます。今回は「超高速AI自動選別機」を開発するハードウェアベンチャーのロビットでエンジニアを務める手島崇文さんを取材しました。
本連載はパブリカが運営するWebメディア「ものづくり新聞」に掲載された記事を、一部編集した上で転載するものです。
ものづくり新聞は全国の中小製造業で働く人に注目し、その魅力を発信する記事を制作しています。伝統を受け継ぎつつ、新しい領域にチャレンジする中小製造業の“いま”を紹介していきます。
ロビットが手掛ける「TESRAY」は食品や薬品などの形や色から不良品を、AI(人工知能)によって“超高速”で判定し、取り除く機械です。シンプルな装置に見えますが、この中には、ベルトコンベヤーやカメラ、エアーノズルなどさまざまなハードウェアに加え、頭脳となるAIのソフトウェアも組み込まれています
不良品の判定は従来、人の目での評価と、手作業での除去が一般的だったそうです。次々に流れてくる食品や薬品をずっと見つめ続けなければなりません。そのようなとても根気のいる作業から解放される時代になりつつあります。
ロビットは2023年2月にツムラと資本業務提携しました。漢方薬を手掛けるツムラは、装置を生薬の選別に使うそうです。
この装置を開発したのは、ハードウェアベンチャーのロビットでエンジニアを務める手島崇文(てしま たかふみ)さんです。この装置を作り出した手島さんは、どのような人物なのでしょうか?
――この装置はお客さまに納入された実績がありますか?
手島さん つい先日(取材は2023年3月)納品したばかりです。納入作業に集中していたので今はほっとしています。
――具体的にどの部分を担当されていたのでしょうか。
手島さん ハードウェア部分全般です。筐体などの板金部品と標準的なネジなどは購入していますが、それ以外の部品は全て自社内で加工しています。その部品加工も担当しています。
――例えば切削や穴あけもご自身で作業されているということですか?
手島さん はい、そうです。
――設計も担当されているのですか?
手島さん はい、設計もしています。まず、設計前にお客さまとの打ち合わせで、どんな検査装置が必要かをお聞きします。その打ち合わせをもとにポンチ絵(手書きで描かれた概念図)を作成し、お客さまのイメージと合っているかを確認してから、3DCADで図面を作成します。ここで、モーターや電気基板、ハーネス/ケーブルの配置を検討していきます。
――大きな会社であれば何人ものチームで行うような作業を、1人で担当されているのですね。
手島さん そうですね。もちろん電気基板やソフトウェアには別の担当者がいますが、それでも大企業に比べると非常に小さなチームです。
――設計、加工が終わると、装置の組み立てに入るのですか?
手島さん そうです。組立の後に動作確認を行います。当初想定していた仕様を満たしているかをチェックし、問題がなければ出荷します。もちろん出荷にも立ち会い、装置がきちんと動作するまで見届けます。
――本当に最初から最後まで担当されているのですね。
手島さん こうして全体を通して関わることができ、楽しいです。大きな会社だと役割が細かく分かれていることが多いのですが、ロビットではまだ人数が少ないこともあり、全体に目を配らなければなりません。今は、それが面白いですね。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.