東北大学と信越化学工業は、スピン波の伝播方向を制御する構造体を共同開発した。また、二次元マグノニック結晶と呼ばれる構造体に照射したスピン波の反射率が、入射角度に依存しづらくなることを確かめた。
東北大学は2024年1月31日、信越化学工業との共同研究により、スピン波の伝播方向を制御する周期構造体を開発したと発表した。
磁石が作り出す波のスピン波は、電子の自転運動であるスピンのコマ運動(歳差運動)が空間的にずれて、波のように伝わっていく現象だ。スピンの波を介して情報を伝達するスピン波デバイスは、消費電力を抑えつつ高集積化が可能なことから、次世代デバイスとして注目されている。
研究グループは、磁性絶縁体でスピン波の損失が小さい磁性ガーネットの膜を作製。その上に直径1mm以下の小さな銅製ディスクを周期的に配置し、二次元マグノニック結晶を形成した。そして銅製ディスクの配置パターンを雪の結晶のような六角形にすると、スピン波を効果的に反射できることを確かめた。
この二次元マグノニック結晶を回転させてスピン波を照射し、マグノニックバンドギャップと呼ばれるスピン波が反射する周波数帯域を計測した。その結果、スピン波の入射角度が10〜30度の間で変化しても、マグノニックバンドギャップが生じる周波数はほとんど変化しないことが明らかになった。
この結果は、二次元マグノニック結晶において、スピン波入射角度に対する依存性が少なく、スピン波の伝播方向制御に利用できる可能性を示している。
研究グループは今後、二次元マグノニック結晶を用いたスピン波の方向制御を実証し、方向制御を利用した機能的素子の開発に取り組む。
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