中央大学と国立情報学研究所は、検査物の内部材質と内部構造を非破壊で推定する新たな検査技術を開発した。カーボンナノチューブをセンサーに用いた材質同定型デバイスシステムと構造復元手法を組み合わせた。
中央大学と国立情報学研究所(NII)は2024年1月19日、検査物の内部材質と内部構造を非破壊で推定する新たな検査技術を開発したと発表した。カーボンナノチューブ(CNT)をセンサーに用いた中央大学の材質同定型デバイスシステムとNIIの構造復元手法を組み合わせ、検査物内部の材質と外観を触れることなく推定できる。
CNT型ミリ波−赤外帯撮像センサー(MMW−IRセンサー)は、広帯域で光を吸収する特性を持ち、薄く柔軟性があることから、広帯域かつ多波長のMMW−IR撮像を360度視野で全方位計測することが可能だ。撮影したシルエット画像を組み合わせ、コンピュータビジョン(CV)の手法で3次元立体的に検査物の構造を復元する。
半導体、ガラス、プラスチック、金属など計5種の多層複合材料から成る検体を用いた実証では、不透明な外壁で目視できない中間層や内壁を個別に復元することに成功した。また、透過性の高いMMW撮像により、最深部層に内蔵していた金属棒も抽出できた。材質ごとの個別復元像を重ね合わせることで、検体全体の非破壊再構成も可能だ。
CNTセンサーの多画素化により、測定時間を短縮できる。単層復元速度は、実用化している他の検査手法と同等の約150秒、復元精度はサイズ誤差2%以内としている。
研究チームは今後、視点数拡張による実際の工業、日用品の非破壊検査試験やCNTセンサーのカメラ実装によるリアルタイムシステム化、撮像情報の高度化による検査機能の拡充に取り組む考えだ。
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