図2のグラフが形態別の総固定資本形成の推移ですね。
そうです。近年では機械・設備、その他の建物・構築物、知的財産生産物、住宅の順で投資規模が大きくなっています。住宅は主に家計、機械・設備は主に企業、その他の建物・構築物は主に政府と企業による投資だと考えてください。
ただ、1993年以前と以後で1993SNAと2008SNAが切り替わっています。これまで計測していなかった項目が増えるなどの影響があり、数値も大きく変化している点にご注意ください。
その他の建物・構築物は工場や店舗、道路や橋梁などで、知的財産生産物は研究・開発、コンピュータソフトウェアなどでしたね。
グラフを見ると、知的財産生産物は少しずつ増えているような印象ですが、それ以外の項目は1990年代をピークにして減少してしまっていますね。
はい、非常に重要な観点ですね。家計も企業も政府も1990年代から総資本形成が減少したり停滞したりしています。
投資がなければ経済が成長しないのは道理ですね。ただし、どの項目も2010年あたりから少しずつ増え始めています。これは良い兆しのように思えます。
おっしゃる通りですね。バブル崩壊前後のピークにはまだ届きませんが、少しずつ投資が増えてきているのはプラス材料だと思います。
でも、なぜこうなっているのでしょうか? 日本だけ特殊なのか、投資の水準が適切なのか、日本のデータだけを見ていると良く分かりませんね。
ごもっともです。他国の総固定資本形成の水準と国際比較してみましょう。
OECDのデータベースから主要国の総固定資本形成(Goss fixed capital formation)の人口1人当たりの推移を比較したのが下のグラフです。
日本は1985年から急激に上昇し始めて、1995年にピークを迎えました。その後減少、停滞しているようです。1990年代には、日本だけ極めて高い水準に達していたことになりますね。
はい。これは図1や図2のグラフとも符合しますね。
為替レートの影響についても見てみましょう。日本は1985年のプラザ合意から1995年にかけて急激に円高が進みました。1995年のドル円為替レートは、年平均で94.1円/ドルです。
なるほど。確かに円高な分ドル換算値だと嵩上げされますが、最近の為替レートが100〜120円/ドルであったことから見れば、それほど極端な円高だったとはいえませんね。
むしろ2010年、2011年は80円/ドル程度でしたので、そちらの方が為替レートの影響が大きいはずです。
最近では、日本は停滞している間に米国やカナダ、ドイツ、韓国に抜かれている状況のようです。フランスと大体同じくらいですね。英国とイタリアがリーマンショックを機に減少、停滞しているのも良く分かります。
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