「工場診断」は見える化による盤石な組織づくりの手法である現場改善を定量化する分析手法とは(6)(3/4 ページ)

» 2024年01月30日 07時00分 公開

2.4 工場診断の具体的事例

 それぞれの工場診断項目の評価方法については、各工場や職場に即した項目や方法を関係者が集まって検討を行い、自由に設定すればいいと考えますが、その際の留意点などについて幾つかの項目を述べておきたいと思います。なお、工場診断の事例については「工程診断」「マテハン診断」について記述しておきましたので、工場診断項目や診断項目の評価方法などの設定時の参考にしてください。

 診断項目は、製品構造や受注形態、生産形態などを勘案して決めてください。診断内容の設定は、できるだけ定量的な内容とすることが大切で、可能であれば自社や他社の最高レベルを調査して、性能や成果を比較する手法の一つであるベンチマークとして定量的に設定することをお勧めします。判定方法の設定は、ベンチマーク値と自工程値を評価して5点法で記入します。診断の実施は、関係者の衆知を集めて、短時間で集中的に行います。この時に気がついた問題点や改善案は付記しておきます。準備した全ての診断項目の診断が終了して得られた結果はレーダーチャートにまとめます。

 以下に診断項目の設定事例として、「工程診断」「マテハン診断」の診断項目、診断方式、評価基準を紹介します。

〈工程診断〉

  • 【工程数〈区分B〉:人手をわたる工程数】
    • 評価方式:月当たりの「全工程数/製作手配件数」
      • 評価基準:[1]21以上[2]11〜20[3]6〜10[4]2〜5[5]1以下
  • 【ST〈区分B〉:1個当たりの作業ST(Standard Time)】
    • 評価方式:月当たりの「作業ST/全工程数)×平均員数」
      • 評価基準:[1]11時間以上[2]6〜10時間[3]1〜5時間[4]11〜1分[5]1分以下
  • 【作業切り替え時間〈区分B〉:作業切り替えに要する時間】
    • 評価方式:月当たりの「作業切り替え時間/全工程数」
      • 評価基準:[1]5時間以上[2]1〜5時間[3]20分〜1時間[4]1〜20分[5]1分以下
  • 【作業切り替え回数〈区分B〉:1工程当たりの作業切り替えピッチ】
    • 評価方式:月当たりの「全工程数/(日数×作業者数)」
      • 評価基準:[1]10回/日・人以上[2]4〜10回/日・人[3]1〜4回/日・人[4]0.2〜4回/日・人[5]0.2回/日・人以下
  • 【停滞量〈区分B〉:各工程における停滞量】
    • 評価方式:職場内の仕掛かり量(hr)/1日当たりの消化能力(hr)
      • 評価基準:[1]11日以上[2]5日〜10日[3]1日〜5日[4]0.5日〜1日[5]0.5日以下
  • 【設備の稼働率〈区分C〉:職場全体の稼働率】
    • 評価方式:Σ(設備の1日当たりの稼働時間)/設備台数×8(hr)
      • 評価基準:[1]0〜10%[2]10〜30%[3]30〜60%[4]60〜90%[5]90%以上
  • 【外注比率〈区分C〉:外注作業の比率】
    • 評価方式:月当たりの「外注作業時間/全作業時間」
      • 評価基準:[1]0〜10%[2]10〜30%[3]30〜60%[4]60〜90%[5]90%以上
  • 【作業者の稼働率〈区分C〉:作業者の作業ペース】
    • 評価方式:他社や他工場と比較する
      • 評価基準:[1]ペースが非常に遅い[2]ペースがゆっくりしている[3]常識程度[4]ペースは速い感じがする[5]ペースは非常に速い
  • 【作業者数〈区分B〉:作業者の集約度】
    • 評価方式:生産面積/作業者数
      • 評価基準:[1]3m2/人以下[2]3〜20m2/人[3]20〜100m2/人[4]100〜500m2/人[5]500m2/人以上
  • 【熟練の要求性〈区分C〉:熟練性】
    • 評価方式:訓練の質と時間
      • 評価基準:[1]特定の作業者で十分な熟練を要する[2]特定の作業者しか作業できない[3]3〜10週間の訓練が必要[4]4時間程度の訓練が必要[5]すぐにでもできる
  • 【自働化率〈区分B〉:機械職場の自動化の程度】
    • 評価方式:職場を見て評価
      • 評価基準:[1]全て汎用機械である[2]自動機やNC機が見当たる程度である[3]自動機やNC機の複数台(多数台持ち)運転が多い[4]ローディングを含めた自働化設備が多い[5]ほとんどの機械設備が無人化されている

〈マテハン(MH:Materials Handling)診断〉

  • 【着脱時間〈区分B〉:部品、半製品の機械設備への着脱時間】
    • 評価方式:総着脱時間/着脱ポジション数
      • 評価基準:[1]5分以上[2]3〜5分[3]1分〜3分[4]10秒〜1分[5]10秒以下
  • 【運搬待ち〈区分C〉:対象MH機器と品物の同期性】
    • 評価方式:職場を見て評価
      • 評価基準:[1]前後工程に品物が多く停滞している[2]前後工程に品物がかなり多く停滞している[3]前後工程の品物の停滞は普通である[4]前後工程の品物の停滞は少ない[5]停滞はほとんどなく、MHシステムに組み込まれている
  • 【運搬距離〈区分B〉:各工程間の運搬距離】
    • 評価方式:運搬距離
      • 評価基準:[1]50m以上[2]15〜50m[3]10〜15m[4]5〜10m[5]5m以下
  • 【設備稼働率〈区分C〉:MH設備の稼働状況】
    • 評価方式:MH設備稼働率
      • 評価基準:[1]10%以下[2]10〜30%[3]30〜60% [4]60〜90%[5]90% 以上
  • 【容器の統一性〈区分B〉:容器類や通い箱などの統一性】
    • 評価方式:容器類などの種類数
      • 評価基準:[1]5種類以上[2]4種類[3]3種類[4]2種類[5]1種類
  • 【MH機械化〈区分B〉:運搬の程度】
    • 評価方式:運搬手段
      • 評価基準:[1]人力が中心[2]台車運搬が中心[3]ローラーコンベヤー、グラビティコンベヤーを利用している[4]駆動コンベヤーが中心[5]機械設備内に組み込まれている
  • 【つなぎ率〈区分B〉:MH作業のつなぎのレベル】
    • 評価方式:無人つなぎ作業数/総つなぎ作業数
      • 評価基準:[1]5%以下[2]5〜15%[3]15〜30%[4]30〜60%[5]60%以上
  • 【取扱い重量〈区分B〉:作業者の1回当たりの取り扱い重量】
    • 評価方式:重量
      • 評価基準:[1]20kg以上[2]10〜20kg[3]5〜10kg[4]1〜5kg[5]1kg以下
  • 【作業能率〈区分B〉:運搬作業者のレーティング】
    • 評価方式:運搬作業者の仕事ぶりを評価
      • 評価基準:[1]作業者が空運搬、空戻りを頻繁にしている[2]作業者が空運搬、空戻りを時々している[3]作業者の運搬スピードは常識程度の速度である[4]作業者が一度に運ぶ運搬量は比較的少ない[5]作業者の運搬は適正量で適正速度である
  • 【重量物の運搬〈区分C〉:重量物の運搬時のMH機器の運搬内容】
    • 評価方式:重量物20kg以上
      • 評価基準:[1]全て人手による運搬[2]一部にバランスローダーが使われている[3]ほとんどの運搬にバランスローダーが使われている[4]バランスローダーなど、半自動化されている[5]エアーパレットなどで自働化されている
  • 【通路抵抗〈区分C〉:運搬や移動ルートの状況】
      • 評価方式:通路の内容
      • 評価基準:[1]通路が凹凸で、小急斜面などもある[2]通路の幅が急変している[3]通路は平たんだが見通しが悪い[4]通路は平たんで比較的良い[5]通路はたんで真っすぐである
  • 【移動の活性度〈区分C〉:部品、半製品や製品の移動状況】
    • 評価方式:平均活性示数
      • 評価基準:[1]バラで床、台、棚などに置いてある[2]コンテナ、箱、袋、束などで、まとめて置いてある[3]パレットや枕などですぐに持ち上げられるように置いてある[4]台車などの車輪付きの車の上に置いてある[5]動いているコンベヤーやシューターなどの上に置いてある

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