無理解な経営陣の「短期開発」が生んだ、ダイハツ64車種の不正品質不正問題(3/3 ページ)

» 2023年12月21日 10時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
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行われた不正行為の一部

 不正行為は多岐にわたる。例えば、エアバッグ用ECU(電子制御ユニット)の開発が側面衝突の認証試験間に合わなかったため、タイマーによる自動着火でエアバッグを作動させた例がある。量産前にECUが設定でき、納入されれば問題ないと考え、開発スケジュールを守るために不正行為を行った。技術検証の結果、エアバッグの乗員保護性能に問題はないと判断したが、上述のキャスト/ピクシスジョイでのドアロック解除の問題が判明した。

 ヘッドレスト後方衝撃試験において、運転席側の試験結果を成績書に記載すべきところ、助手席側のデータしかなかったため助手席側のデータを運転席側のものとして記載して認証申請を行った。運転席側の試験を実施する時間的な余裕がないことが背景にあった。

 歩行者保護の試験では衝突速度が法規の基準値の上限を超えていたが、「衝突速度が速いほど不利になるため、不利な条件で合格できるということは速度が基準値でも合格と扱われる」と考え、虚偽の衝突速度を記載した。

 助手席頭部加速度の立ち会い試験では、事前のリハーサル試験のデータと差し替えられるようあらかじめ準備し、立ち会い試験実施後に計測システム上でデータを差し替えて出力して提出した。対象車種はエアバッグが装備されていない車両だったため、ダミーの頭部が車室内の部材に衝突して異常値が計測され、衝突の状況によっては異常値を削除して計算することができず、認証試験に合格しない恐れがあった。そのため、立ち会い試験での結果に関係なく、認証試験に確実に合格するために事前に差し替えデータを用意した。

第三者委員会の提言と調査方法

 第三者委員会は再発防止に向けて、経営幹部から従業員に反省や出直しの決意表明をすること、硬直的な短期開発の見直しなどを提言した。

 第三者委員会では、ダイハツから入手した関係資料の精査、147人に対する合計327回のヒアリング、役職員37人の電子データを対象とするデジタルフォレンジック調査、役職員3696人を対象としたアンケート調査(回答者は3642人、回収率98.54%)、ホットラインの開設と運営、認証申請書類の不整合の確認、現地視察などの調査を行った。

 第三者委員会は、ダイハツと利害関係のない、法律や技術に関する専門家で構成されている。委員長は大手町法律事務所の弁護士である貝阿彌誠氏(東京地方裁判所所長、東京高等裁判所部総括判事を経験)、委員は中村・角田・松本法律事務所 パートナーの弁護士である仁科秀隆氏と、自動車情報利活用促進協会 理事の中山寛治氏(国土交通省 自動車交通局 技術安全部部長を経験)。

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