京都マイクロコンピュータは、同社が2017年から展開しているRTOSパッケージ「SOLID」のT-Kernel版を参考展示した。SOLIDのOSカーネルはTOPPERSだったが、64ビットのArmプロセッサに対応するT-Kernel版を用意することで、Rustも利用できる開発環境やミドルウェアなどを含めたSOLIDの強みをより広くアピールしていきたい考えだ。
これと合わせて、2022年末から無償で公開している「Raspberry Pi 4(ラズパイ4)」向けSOLIDの存在もアピールした。一部機能限定はあるもののSOLIDの機能をほぼ全て利用可能で、手元にラズパイ4があればすぐに、Windowsの統合開発環境でRTOSアプリケーションの開発とデバッグを行って、Linuxアプリケーションとの同時動作を試せるという。
「RTOSを試しに使ってもらおうと思っても、これまでは評価ボードの購入がハードルになっていた。ECサイトなどでも気軽に購入できるラズパイで試してもらえば、SOLIDの良さを実感してもらえるのではないか」(京都マイクロコンピュータの説明員)という。
今回の2023 TRON Symposiumは「DX2GX」がテーマとなっており、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーにも焦点を当てている。NECは、サーキュラーエコノミーの事例として、富山市や富山大学と実証実験を行っているアルミニウムのリサイクルの取り組みについて紹介した。
アルミニウムは原料のボーキサイトを電気分解して精錬するが、この電気分解で大電力を消費するためCO2排出量が大きいことが課題となっている。これに対して、資源ごみとして回収されるアルミ缶を原料とするアルミニウムを製造する際のCO2排出量は、ボーキサイトから精錬するバージンアルミニウムの1%と極めて少ない。その一方で、リサイクルを繰り返すことで不純物が蓄積して、用途にそぐわないレベルまで純度や特性が低下してしまう。
NECはブロックチェーン技術を用いて、アルミニウムのリサイクルフローにおけるトレーサービリティーを確保し、リサイクルアルミニウムの品質情報を明示することで、用途に合わせた最適な純度と品質のアルミニウムを提供できる体制を構築している。また、回収アルミ缶を起点とする地域内での資源循環にも貢献することで、サーキュラーエコノミーも実現できることになる。「富山県はアルミニウム押し出し材などで国内トップクラスの生産量があり、今回の実証実験には最適だ」(NECの説明員)という。
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