東芝は、衛星通信に向けたQKD送受信システムの小型化と高速化に成功した。GHz帯の周波数を利用した高速QKD通信と小型の送受信モジュールにより、低軌道衛星が上空を通過する数分間に大量の暗号鍵を生成できる。
東芝は2026年1月28日、衛星通信に向けたQKD(Quantum Key Distribution:量子鍵配送)送受信システムの小型化と高速化に成功したと発表した。
QKD送受信システムは、理論上解読不可能とされる量子暗号通信を人工衛星と地上局間で連携するための基幹技術だ。同社が開発したシステムは、GHz帯の周波数を利用した高速QKD通信と小型の送受信モジュールにより、高速で大量の暗号鍵を生成できる。
同社は、低消費電力で変調帯域幅が広いVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:垂直共振器面発光レーザー)を複数用いることで、1GHzで高速かつ安定した量子信号を発生させた。また、FPGAでQKDプロトコルに必要な偏光状態や強度レベルを高速信号で正確に制御することで、低軌道衛星が上空を通過する数分の間に大量の暗号鍵を生成できるようになった。
モジュール設計については、光学多重化技術や同社の光学設計の知見を取り入れることで、性能の高さはそのままに小型化を果たした。送信機は20×10×10cmで重さ1.6kg、受信機は40×30×10cmで重さ約9.0kgと、GHz帯の周波数を用いるモジュールとしては世界最小クラスとなる。この小型軽量設計により、低軌道衛星への搭載コスト低減や地上局への設置性向上などが見込めるほか、複数の低軌道衛星との連携も容易になる。
衛星QKDと地上光ファイバーQKDの統合には、波長や伝送方式、管理プロトコルの差異が課題となる。同社は、今回開発した小型送受信機をヘリオット・ワット大学(英国)の衛星地上局へ組み込み、異なるシステム間での暗号鍵共有試験を実施した。
具体的には、地上局内の望遠鏡前方に設置した送信機から、約1m離れた受信機へ暗号鍵を送信。生成された鍵をETSI標準準拠のソフトウェアを介して光ファイバーQKDへつなぐことで、規格の異なるネットワーク間でのシームレスな連携を実証した。この成果は、大陸間を結ぶ広域な量子セキュア通信網を構築する上で不可欠な基盤技術になることが期待される。
東芝は、2027年度に低軌道衛星と地上局間の長距離通信を実施し、時間や気象条件を問わず安定した運用が可能であることを実証する。また、複数衛星により、大陸間を安全につないで機密情報を通信できる量子ネットワークの構築を目指す。
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