23年度上期の新車生産は3年連続で前年超え、コロナ禍前からは8.5%減自動車メーカー生産動向(3/3 ページ)

» 2023年11月24日 06時00分 公開
[MONOist]
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ダイハツ工業

 半導体不足や仕入れ先の火災などで厳しい環境に置かれたのがダイハツだ。2023年度上期のグローバル生産は、前年同期比2.2%減の76万6889台と3年ぶりに前年実績を下回った。8社の世界生産では最大の落ち込み幅となった。

 要因は国内生産で、ブレーキ部品に搭載する半導体の不足により、5月から6月にかけて大分工場(大分県中津市)と京都工場(京都府大山崎)で相次ぎ稼働停止を実施。加えて5月19日には、国内向け「ロッキー/ライズ(トヨタ向けOEM)」のHEVでポール側面衝突試験の認証手続きに関する不正を発表し、生産を停止。さらに6月18日には、リヤアクスルなどのユニット部品を調達する浅野歯車工作所で工場火災が発生。これにより本社工場(大阪府池田市)や滋賀工場(滋賀県竜王町)、ダイハツ九州工場(大分県中津市)で最大12日間の稼働停止を余儀なくされた。

 その結果、登録車の生産が前年同期比10.7%減と台数を落とした他、2022年の一部改良で押し出しの強いフロントデザインに変更した「タント」が好調な軽自動車も同2.3%減となった。その結果、国内生産は同4.7%減の36万9459台と4年連続で減少。8社の国内生産で唯一の前年割れとなった。

 国内生産が不調だった一方で、海外生産は前年同期比0.2%増の39万7430台と3年連続のプラスで、年度上期の海外生産として過去最高を更新した。インドネシアは同6.4%減と伸び悩んだものの、マレーシアが新型「アジア」の投入などにより同11.9%増とけん引した。

 9月の世界生産は、前年同月比4.0%減の15万7095台と2カ月ぶりのマイナスとなった。海外生産が同11.6%減の7万1568台と2カ月連続で前年実績を下回った。マレーシアは同8.2%増と好調だったものの、インドネシアが前年に高い伸びを示した反動で同22.7%減と大きく減少した。

 一方、国内生産は、前年同月比3.4%増の8万5527台と2カ月連続のプラス。浅野歯車工作所の工場火災で稼働停止した挽回生産を図った結果が表れた。このうち軽自動車は同3.6%増で、9月として過去最高を更新。登録車も同3.0%増と増加した。

マツダ

 上期の生産で最も強い回復基調を示したのがマツダだ。2023年度上期のグローバル生産台数は、前年同期比17.9%増の59万2891台と2年連続で増加した。半導体の供給改善が進んだことや米国工場の2直化などが要因。とはいえ、半導体不足は依然として続いていることや、中国での販売低迷などもあり、コロナ禍前の2019年度上期との比較では18.3%減にとどまった。

 このうち世界生産の3分の2以上を占める国内生産は、前年同期比18.6%増の39万9057台と3年連続のプラスだった。半導体の供給改善に加えて、前年の中国からの部品供給不足の反動などが要因。車種別では「CX-5」が同5.7%増、「マツダ3」は同79.7%増、「CX-30」も同58.7%増と主力モデルがそろって回復した。

 海外生産も、前年同期比16.4%増の19万3834台と2年連続のプラスだった。ただ、地域によって明暗が分かれている。北米は、メキシコが前年の稼働停止の反動の他、マツダ3やCX-30の増産などにより、同35.8%増と増加。さらに米国工場も2直化したことで同65.1%増と伸長。北米トータルでは同41.9%増と高い伸びを見せた。一方、タイは現地の需要に合わせて「マツダ2」やCX-30の生産調整を実施したこともあり、同20.6%減と低迷した。

 販売低迷が続く中国は、一汽乗用車での「マツダ6」と「CX-4」の生産委託を4月に終了。唯一の生産拠点である長安マツダ汽車では、マツダ3やCX-30の在庫調整を実施したが、6月から新たに「CX-50」の生産を開始。その結果、中国生産は前年同期比0.7%減とマイナス幅を大きく改善した。中国で苦戦する日系メーカーの中では最も減少幅が少なかった。

 9月単月のグローバル生産台数は、前年同月比17.4%増の11万9175台と2カ月ぶりに増加へ転じた。このうち国内生産は同19.4%増の8万74台と2カ月ぶりに前年実績を上回った。車種別では主力モデルのCX-5が同1.4%減と伸び悩んだものの、マツダ3は同90.1%増と伸長。さらに北米など向けの3列シートSUVの新型車「CX-90」の8571台も純増となった。

 海外生産も、前年同月比13.5%増の3万9101台と3カ月連続のプラス。北米は、メキシコが同4.6%増となった他、米国が2直化により同108.2%増と倍増した。中国も前年実績が低水準だったことと、CX-50の生産開始により同49.2%増と大きく伸長すると同時に、日系メーカーで唯一の前年超えだった。ただ、タイは販売が低迷しており、マツダ2やCX-3の在庫調整により同35.9%減と生産も大幅に減らしている。

スバル

 スバルも好調を維持している。2023年度上期のグローバル生産台数は、前年同期比15.9%増の49万3176台と2年連続で前年実績を上回った。前年に比べて半導体不足が緩和したことが要因で、コロナ禍前の2019年度上期との比較でも1.0%減まで回復している。

 その結果、8社の順位でも三菱自を上回り7位につけた。それでも依然として半導体不足の影響は残っており、特に販売好調な北米では供給が足りない状況が続いている。このうち国内生産は前年同期比13.2%増の32万215台と2年連続のプラス。海外生産も同21.2%増の17万2961台と2年連続で増加した。

 足元も状況は変わらない。9月単月のグローバル生産台数は、前年同月比26.7%増の9万2715台と8カ月連続の前年超え。8社の9月の世界生産で最大の伸長率となった。このうち国内生産は、同36.2%増の6万2358台と2カ月ぶりのプラス。海外生産も同10.8%増の3万357台と8カ月連続で増加した。

三菱自動車

 三菱自の2023年度上期のグローバル生産台数は、前年同期比0.5%減の48万5055台と3年ぶりに前年実績を下回った。海外生産が伸び悩み、前年同期比8.5%減の25万5804台と3年ぶりの減少。主力拠点のタイが同1.6%増、インドネシアも同4.5%増と堅調だったものの、中国事業が大きく足を引っ張った。新型「アウトランダー」の深刻な販売不振により、3月から現地生産を停止しており、上期の生産台数は0台だった。その結果、アジアトータルでは同6.2%減となった。

 なお、三菱自は、中国の車両生産から撤退すると10月24日に発表した。現地合弁会社の株式持ち分は、合弁先の広州汽車に譲渡し、在庫が無くなり次第、中国での三菱車の販売も終了する。一方、エンジンサプライヤーとしての事業は継続するとしている。これに伴い、2024年3月期決算で243億円の特別損失を計上する。

 中国の低迷とは異なり国内生産は好調で、前年同期比10.4%増の22万9251台と3年連続で増加した。半導体の供給改善に加えて、北米向け「アウトランダー」の好調や、軽自動車の新型車「デリカミニ」の純増などがプラスにつながった。

 ただ、足元の実績は振るわない。9月単月のグローバル生産は、前年同月比11.5%減の9万4355台と3カ月連続のマイナスだった。9月の世界生産で2桁パーセント減は三菱自のみ。このうち国内生産は同5.6%減の4万4791台と3カ月連続で減少した。輸出が同22.9%減と落ち込んだ他、前年は販売が好調だった軽EVが大きく台数を減らしている。海外生産はさらに厳しく、同16.3%減の4万9564台と4カ月連続のマイナス。タイは同6.7%増とプラスを確保したが、インドネシアが同15.3%減と低迷。中国は生産停止により0台だった。

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