パナソニック ホールディングスは2023年度第2四半期の連結業績を発表。米国IRA法による補助金の後押しはあったものの、くらし事業、インダストリー事業、エナジー事業の変調があり、通期業績予想を下方修正する結果となった。
パナソニック ホールディングス(以下、パナソニックHD)は2023年10月30日、2023年度(2024年3月期)第2四半期(7〜9月)の連結業績を発表。米国IRA(Inflation Reduction Act)法による補助金の後押しはあったものの、くらし事業、インダストリー事業、エナジー事業の変調があり、通期業績予想を下方修正する結果となった。
パナソニックHDの2023年度第2四半期の連結業績は、売上高が前年同期比同等の2兆897億円、営業利益が同19%増の1024億円、税引き前利益が同24%増の1156億円、当期純利益が同50%増となる875億円となった。前年同期比で見ると改善が目立つ内容となっているが、IRA法による補助金の後押し分を抜くと、税引き前利益と当期純利益を除く数値は全て前年割れとなっており、第2四半期単体で見ると苦戦した。
パナソニックHD 代表取締役 副社長執行役員 グループCFOの梅田博和氏は「強い事業と苦戦する事業が分かれた。2022年度に苦戦した事業は復活してきたが、新たにくらし事業の欧州A2W(Air to Water)が伸び悩んだ他、インダストリー事業の中国工場省人化市場が低迷し苦戦した。事業ごとの環境を踏まえてメリハリをつけて体質強化を進めたい」と語っている。
誤算となった事業の1つがくらし事業の欧州空調事業だ。くらし事業では、空気質が求められる環境の広がりや、環境規制の強まり、ガス価格の高騰などにより、欧州において燃焼系のボイラーからA2Wへ移行する動きが加速すると予想し、欧州A2W事業を重点領域の1つとして位置付けて積極的な展開を進めてきた。しかし、ガス価格の下落や補助金スキームの変更などがあり、2023年度に入ってから市場そのものが前年割れの状態が続いている。それにより、当初の成長見通しから大きく外れる結果となった。「ただ、2030年には600万台市場となるなど、中長期的には再成長をすると見ている。そのため販売基盤、生産基盤などの整備を進めていく」と梅田氏は述べている。
もう1つ厳しい現状にさらされているのがインダストリー事業における工場省人化関連領域だ。インダストリー事業の他の領域では市場平均以上や、市場平均並みの成長を見せているのに対し、工場省人化領域は、市場そのものは前年同期比7%増の成長を続けているにもかかわらず、パナソニックは前年同期比25%減という状況で、市場成長率とのギャップが大きくなっている。梅田氏は「パナソニックではFAソリューションの4割以上の売上高を中国市場に依存しているが、中国市場そのものが停滞している他、市場内での競争関係も厳しく、すぐに回復するということは難しそうだ」と梅田氏は述べている。
さらに、エナジー事業における車載電池もIRA法の影響が思わぬ方向で影響したという。「国内工場で製造する1865サイズの電池は主にテスラのモデルS、モデルXに搭載されているが、これらは8万米ドル以上の価格帯だ。IRA法のEVへの補助は8万米ドル以下の車種という条件があるため、販売が伸び悩んだ影響を受けた」(梅田氏)。そのため、国内工場では約6割の減産を行い、在庫正常化を進めたという。
梅田氏は「北米は好調なので、国内では固定費の適正化を進め、需要の回復に合わせて生産を拡大する。中長期としては、マツダやSUBARUに続いて国内顧客の開拓や商品基盤の拡充を図っていく」と対策について述べている。
こうした第2四半期におけるいくつかの事業の変調を受けて、2023年度通期の業績見通しは売上高で前回予想比1000億円減の8兆4000億円、営業利益で同300億円減の4000億円と下方修正している。
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