コロナ禍で製造業のマーケティング手法もデジタルシフトが加速した。だが、業界の事情に合わせたデジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。
コロナ禍で製造業のマーケティング手法もデジタルシフトが加速した。だが、業界の事情に合わせたデジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。第8回のテーマは「マーケティングにおける技術者の重要性」だ。
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マーケティングチームを作るときに、そこに技術者は含まれているだろうか。マーケティング部、営業、広報、デザイナーのみで構成されているチームと技術者も参加しているチームでは、マーケティングの質は大きく変わってくる。
マーケティングの概念は、広義と狭義によって異なる意味合いを持つ。広義では「価値を創造する活動」であり、新製品の開発、価格設定、販売促進、配送、サービスなど、企業の全ての活動がマーケティングとして捉えられる。顧客のニーズと期待を満たすための活動全体をマーケティングと言う。
一方で、狭義では「製品やサービスを売り出すため活動」であり、市場調査、ターゲティング、プロモーション、広告、販売活動などのことをマーケティングと言う。
どちらの意味においても、技術者の役割は大きく、特に製品の性能が重視される「B2B」では技術者なしのマーケティングは成り立たない。理由は「技術者は、自社の製品や技術が優れていることを示す具体的なデータを保有しているから」である。
顧客が製品の購入を検討するとき、必ずといっていいほど複数の製品を比較する。これは常に競合との対比があることを意味する。そして、購入の決断を促すには、自社製品の長所をしっかりと伝え、認識してもらうことが不可欠になる。その際に必要とされるのが、「差別化の要点」とそれを裏付ける「データ」であり、これらの情報を持っているのが技術者なのである。だからこそ、マーケティングを進める際には技術者の協力が必要不可欠になってくる。
しかし、技術者がマーケティングに積極的に参加してくれるケースは少ない。マーケティングのチームリーダーは、その理由を理解した上で技術者が参加したくなるような環境を整えることが求められる。
技術者がマーケティングに参加したくない理由を簡単にまとめる。
技術者の業務は新製品の開発、改善、量産品のトラブルシューティング、生産プロセスの最適化などが中心であり、厳しい納期の中でなんとかタスクを遂行している状況である。
マーケティング活動への参加には、それ相当の時間を割く必要がある。例えば、打ち合わせへの参加、技術データのまとめ直し、技術説明用の資料作り、広報資料の技術部分の確認など、参加するとなると思った以上に時間は取られる。メインの業務だけでも時間が足りない中、追加業務となると受け入れが難しいと思う技術者は多い。
マーケティング活動は各部署の協力によって行われるため、技術者の協力が必要な場面はマーケティング活動全体の一部になる。例えば、どの媒体に、どれくらいの予算で、どういった告知を出すかなどはマーケティング部や営業が主体となって決めることが多い。
技術者は専門業務にリソースを集中させるため、直接関連が少ない業務への時間を割くことは極力避けたいと考えている。
多くの技術者は、役割や業務の区分けを明確にしたがる性質がある。つまり、製品の開発は彼らの領域であり、それに対して販売やマーケティングは営業やマーケティング部門の役割というように考える傾向がある。
このため、製品が完成した後の段階、特に販売や宣伝の活動には直接関与しないとの認識を持つ技術者も少なくない。彼らは、自身の専門性や業務の範囲内での最大の貢献を重視するため、製品の販売段階にはあまり関心を示さないことが多い。
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