日立グループは環境戦略として、2030年度に社内生産活動によるCO2排出の実質ゼロを目指す「GX for CORE」と、改良製品による顧客のCO2排出削減に貢献する「GX for GROWTH」の2本柱で事業を展開している。足元の進捗としては、2024年度に、日立グループ全体のCO2排出量が2010年度比で64%削減、顧客のCO2排出削減量で年間1億2610万トンを見通すなど、計画を上回る状況になっている。とはいえ、2030年度のCO2排出実質ゼロという目標は高く、顧客のCO2排出削減にもさらに貢献していく必要がある。今回の多拠点エネルギーマネジメントの実証実験は、日立グループのGX for COREとGX for GROWTHの両方を拡大するための重要な取り組みとなる。
今回の実証実験や技術開発、そして外販も含めて重要な役割を担う日立パワーは、カーボンニュートラル事業に注力している。省エネやエネルギーマネジメント、プロセス改革といったCO2排出量を減らす施策、再エネの自家消費や調達と関わる創る/調達する施策、再エネ証書やオフセットクレジットの購入などのオフセットの施策などについて、標準化されたソリューションをモジュール化し、それらを組み合わせて顧客に提供している。例えば、顧客のユーティリティー設備を日立パワーが保有しそれらの運営と管理をマネージドサービスで提供する「EFaaS(Energy & Facility Management as a Service)」などがある。
日立グループ自身を含めて国内企業におけるカーボンニュートラルの推進に3つの課題があるという。1つ目は電力の供給側で起こる、余剰再エネ発生に伴うコストアップだ。太陽光発電システムの発電量は昼間がピークになるが、余剰が発生して市場売却しようとしても発電単価よりも安くなってしまい、出力減を余儀なくされることが多くある。2つ目と3つ目は需要側の課題で、省エネ効果だけでの設備投資の回収やCO2排出量の予実管理が難しいことだ。今回の実証実験において、1つ目の課題に対応するのが、多拠点での電力融通を可能にする自己託送の仕組みと、それでも吸収しきれない余剰電力を分配するバーチャルPPA(電力購入契約)だ。2つ目の課題は空調機器DR機能やVPP機能で、3つ目の課題はEMSにおける電力消費量/CO2排出量の予実コントロールで対応する。
実証実験で外販のめどがついた機能やサービスは、日立パワーがカーボンニュートラル事業の中でモジュール化して提供していく。日立パワーの2022年度の売上高は1108億円で、現時点でカーボンニュートラル事業はその32%を占めるグリーン事業の一部にすぎない。しかし2030年度には、そのグリーン事業の売上高を上回る400億〜500億円を見込んでおり、日立グループの成長に向けて大きな期待がかかっているといえる。
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「日立にとってCO2排出量削減は追い風」、環境とデジタルが成長エンジンにCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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