2年ぶりに前年超えの2023年上期の新車生産、中国は苦戦で陰り自動車メーカー生産動向(2/4 ページ)

» 2023年08月29日 12時30分 公開
[MONOist]

トヨタ自動車

 以下、メーカー別に解説する。トヨタの2023年上期のグローバル生産台数は前年同期比12.1%増の489万3771台と2年ぶりに増加した。これまでの上期の世界生産で最多だった2019年を上回り、過去最高を更新した。けん引役は海外生産で、同5.1%増の325万1108台と3年連続のプラス。上期として過去最高となった。前年に比べて半導体不足が緩和したことや、北米やアジアでの能力増強が奏功した。

 地域別では、主力の北米は前年の半導体不足による生産制限の反動に加えて、新型車の投入や生産能力の増強および生産最適化などの実施により、前年同期比8.8%増と2年ぶりに増加した。一方、中国は、前年の上海のロックダウンの反動はあったものの、3月まで新型コロナウイルス感染症の感染拡大による稼働調整の他、新たな排出ガス規制「国6b」への対応に伴い生産調整を実施しているため、同7.6%減と2年ぶりのマイナス。とはいえ、中国市場で日系メーカーが苦戦する中、中国生産を行う5社では唯一1桁パーセント減にとどめた。

 中国以外のアジアは、前年の新型コロナウイルス感染症感染拡大や部品調達難の反動の他、タイやインドで能力増強を実施。主要拠点のタイが同5.4%増、インドが同3.6倍、フィリピンが同38.4%増と伸びを見せ、アジアトータルでは同2.8%増と3年連続で前年実績を上回った。欧州は3月まで部品供給の影響を受けたが、前年の半導体不足の反動により同0.2%増と微増。中南米も同3.6%増のプラスだった。

 国内生産は海外以上に回復が鮮明で、前年同期比29.2%増の164万2663台と2年ぶりに前年実績を上回った。上期の国内生産で160万台を超えたのは2014年以来9年ぶり。半導体など部品供給改善の影響が大きく表れた格好だ。また、国内市場の納期短縮を目的に、年明け以降、国内向けの部品供給を増やしたことも大幅増につながった。それでも「プリウス」や「アルファード/ヴェルファイア」など人気の新型車は受注を停止している他、「ノア/ヴォクシー」など売れ筋モデルでも納期が6カ月以上となっており、依然として供給が追い付いていない状況は続いている。

 国内向けの生産を増やしている様子は、6月単月の数字からも伺うことができる。6月のグローバル生産は前年同月比14.8%増の91万4352台と6カ月連続でプラスを確保し、全ての月を通じて単月生産として過去最高を更新した。このうち国内生産は、同51.6%増の31万2865台と6カ月連続の前年超え。これは半導体不足の改善の他、前年6月が中国のロックダウンの影響に伴い部品調達に支障をきたし、国内工場で相次ぎ稼働停止を実施して前年に比べて3割減産していたことが要因だ。

 海外生産は、前年同月比1.9%増の60万1487台と3カ月連続で前年実績を上回り、6月の生産台数として過去最高となった。けん引したのは主要市場の北米で、部品供給不足の緩和により同12.9%増と3カ月連続で増加した。ただ、中国は前年6月がロックダウン明けで増産した他、国6bの対応で生産調整を実施しているため、同18.3%減と大きく落ち込み、2カ月連続のマイナスとなった。

 中国以外のアジアは国によってまちまちの状況で、タイ、フィリピン、ベトナム、インドは増加したが、インドネシア、マレーシア、台湾、パキスタンはマイナス。その結果、中国を含むアジアトータルでは同7.1%減と3カ月ぶりに減少した。欧州は半導体不足の影響は緩和しているものの、トルコで新型「C-HR」の生産準備に伴い稼働を停止したため、同3.5%減と減少した。

ホンダ

 ホンダの2023年上期のグローバル生産は、前年同期比5.4%増の201万7756台と2年ぶりに前年実績を上回った。このうち海外生産は、同5.5%増の169万356台と2年ぶりのプラスだった。主力市場の北米は、半導体不足の緩和の他、前年が中国のロックダウンに伴う部品調達難で減産していた反動などもあり、同27.0%増と大幅に増え、2年ぶりに前年実績を上回った。

 ただ、中国は、月によるバラつきが大きく、2月まで実施した半導体不足による大幅減産をカバーできず、同12.3%減と2年連続で減少した。東南アジアは回復基調が続いたが中国の減産を受けて、アジアトータルでも同8.4%減と2年連続のマイナスとなった。

 国内生産は、前年同期比4.8%増の32万7400台と4年ぶりにプラスへ転じた。前年上期に比べて半導体不足の影響が緩和しプラスを確保したが、コロナ禍で大幅減産した2020年上期との比較でも1割減という低水準であり、依然として半導体が足りていない様子が伺える。

 とはいえ、国内市場の需要動向を踏まえて部品調達を進めており、国内最量販車種の「N-BOX」はモデル末期ながら、2023年上期の国内販売で同8.0%増とプラスを確保し、車名別ランキングでも首位を守った。N-BOXなど軽自動車は比較的短期間での納車が可能ながら、「ステップワゴン」や「ZR-V」は半年以上と、依然として半導体不足が登録車販売の足かせになっている。

 回復基調が続いていたホンダだが、6月単月の世界生産は、前年同月比4.1%減の37万1837台と4カ月ぶりに減少へ転じた。このうち海外生産は、同1.9%減の31万5304台と4カ月ぶりのマイナス。北米は販売好調に加えて、前年のサプライチェーン混乱の反動増も重なり、同23.8%増と大きく伸長し、6カ月連続のプラスだ。

 中国は前年6月がロックダウンからの回復などで高水準だったこともあり、同19.3%減と4カ月ぶりに減少。その結果、アジアトータルも同16.8%減と4カ月ぶりのマイナスだった。国内生産も伸び悩み、前年同月比14.6%減の5万6533台と5カ月ぶりに減少した。

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