住友ゴムのMIはレシピ共有でスタート、今はタイヤのライフサイクル全体を対象にマテリアルズインフォマティクス最前線(2)(3/5 ページ)

» 2023年09月01日 07時00分 公開
[遠藤和宏MONOist]

Tyre Leap AI AnalysisはマルチモーダルAIに

MONOist 次にTyre Leap AI Analysisについて教えてください。

岸本氏 ADVANCED 4D NANO DESIGNを開発した当時、コンピュータシミュレーションは新品時のゴム材料の開発に活用していた。しかし、実際に使用されたゴムの内部構造がどのように変化しているのかをコンピュータシミュレーションで再現することは困難だった。

 また、タイヤの変化を目視で捉えることも難しかった。当時は新品のタイヤと3年使用後のものからそれぞれ採取したトレッドゴムを電子顕微鏡で見ても、3年使用後のタイヤではなんとなく変わっているということしか分からなかった。そのため、AI技術のTyre Leap AI Analysisを開発した。

タイヤから採取したトレッドゴムの電子顕微鏡画像[クリックして拡大] 出所:住友ゴム工業

 Tyre Leap AI Analysisの開発手順について、まず電子顕微鏡で撮影したゴムの画像と配合のレシピをAIに学習させてゴムの物性を予測する技術を作った。

新品タイヤと使用後タイヤの「変化」を捉えるAIとして「Tyre Leap AI Analysis」を開発[クリックして拡大] 出所:住友ゴム工業

 ただ、当時は使用後のタイヤから採取したゴムの電子顕微鏡画像が手に入らなかった。このことを踏まえて、Tyre Leap AI Analysisの初期バージョンでは、大量の新品のタイヤから採取したゴムの電子顕微鏡画像のみを学習させ、新品と使用後のゴムを識別できるようにした異常検知AIを採用している。これにより、使用後のタイヤから採取したゴムの電子顕微鏡画像から、ゴムの表面や内部の変化を数値化できるようになった。その数値を用いてタイヤの性能を高めるための材料変更などの議論が行えるようになった。

 現在のTyre Leap AI Analysisは、ゴムの電子顕微鏡画像だけでなく、さまざまなゴムの画像の変化を可視化できるマルチモーダルAI(テキストや画像、音声、動画などの複数の種類の情報を一度に処理することができるAI)になりつつある。

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