中国で販売台数が減少しているのは日産自動車だけではない。中国の現地ブランドの新エネルギー車(NEV)の販売が好調で、2023年上期でみるとシェアが前年同期から6ポイント増加して25%となった(2020年通年ではシェア5%、日産自動車調べ)。その代わりにシェアを落としたのが、日産自動車を含む外資系自動車メーカーの合弁企業が販売するNEV以外のモデルだ。2020年通年では61%、2022年上期で48%のシェアがあったが、2023年上期は40%に下落した。
現地ブランドのNEV以外のモデルはシェアを維持しており、外資系自動車メーカーの合弁企業や米国自動車メーカーが販売するNEVのシェアは2022年上期から2ポイント増加した。エンジン車の市場が急速にNEVに置き換わっているという。
2023年1〜3月は補助金をにらんだ買い控えなどによる全体需要の減少やエンジン車に対する新たな規制の導入を見据えた価格競争の影響が大きかった。2023年4〜6月はその動きが落ち着き、下げ幅が小さくなったとしている。
日産自動車は販売が落ち込んでいる中国向けにEV(電気自動車)「アリア」のエントリーグレードやヴェヌーシアブランドのPHEV(プラグインハイブリッド車)といったNEVを投入するとともに、「エクストレイル」のe-POWERモデルや「キャシュカイ」などで2023年下期の挽回を図る。
NEVの購入者は価格を非常に重視しており、新技術への関心も高いという。これを踏まえて、現地ブランドに対抗するための付加価値や価格競争力を磨く。中国国内での部品調達やデザイン、開発、生産、販売までのフルバリューチェーンや、現地でのパートナー企業の強みを活用して商品力を高める。また、中国を含む主要地域の責任者や商品企画の責任者を経営会議に加え、各市場に向けた意思決定のスピードを上げる。
日産自動車は中国市場で20年以上にわたって1500万台以上を販売し、現在も多くのユーザーを抱える。今後も日産車を選んでもらうために、NEVや、引き続き多くの需要があるガソリン車で幅広い選択肢をそろえていく。また、2024年度から複数のNEVを投入することも決めた。今後のラインアップをタイムリーに投入することが、中国事業が存続する絶対条件だとしている。ただ、2024年も中国市場の競争は厳しいと見込む。市場のニーズに合わせたインフォテインメントシステムを搭載した製品をタイムリーに投入するなど、足元でできる取り組みを進めながら、中期的な成長に備えていく。
現状の中国での販売見通しは現地の生産能力を大きく下回っており、一部の工場では稼働率が低迷している。中国向け以外の車両の生産を検討し、グローバルで供給が追い付いていない車種を補完するなど最適化を図る。
ルノーグループと日産自動車は、2023年2月6日に締結した拘束力のある枠組み合意を踏まえた最終契約を完了したと発表した。
これに伴い、ルノーグループと日産自動車はロックアップおよびスタンドスティル義務を伴う15%の株式を相互に保有する。これまでルノーグループが保有していた日産自動車の株式28.4%はフランスの信託会社に信託し、売却される。
この一環で、日産自動車はルノーグループが欧州に設立するEV(電気自動車)とソフトウェア開発の新会社アンペアに最大6億ユーロ(約900億円)を出資し、取締役を派遣する。
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