ボルボ(Volvo Cars)は2022年11月8日、内燃機関の開発と製造を完全に終了すると発表した。
ボルボ(Volvo Cars)は2022年11月8日、内燃機関の開発と製造を完全に終了すると発表した。
吉利汽車の親会社ジーリーホールディング(Geely Holding)に、合弁会社であるAurobayの持ち分33%を2022年末までに売却する。ボルボとジーリーホールディングは、それぞれが持つエンジンに関する生産拠点や研究開発拠点を合弁会社Aurobayに切り出し、2021年から独立した事業として動いていた。
Aurobayは、今後もサプライヤーとして引き続きボルボとも取引する。ボルボは2030年にゼロエミッション車100%を達成するまでの間、ハイブリッドシステムやマイルドハイブリッドシステムをAurobayからのみ調達する。
売却益などは非公開だが、スウェーデンでのモーター生産ラインの新設などに充てる。ボルボは内燃機関の開発や製造を完全に終了する最初の自動車メーカーになるとしている。Aurobayへの出資を終えることは、ゼロエミッション車のみを扱う自動車メーカーになるための変革における重要な一歩だという。
ジーリーホールディングは同日、ルノーグループとの折半出資で内燃機関やハイブリッドシステムを手掛ける新会社を設立すると発表した。ジーリーホールディングはボルボの内燃機関のリソースを全て手中に収めた上で、ルノーと組む格好だ。ルノーも、内燃機関の生産拠点や開発リソースをジーリーホールディングとの新会社に集約する。新会社では、エンジン、トランスミッション、電動システム、バッテリーなど全てのコンポーネントを開発から生産まで行う。
また、ジーリーホールディングは2020年11月に、メルセデス・ベンツともハイブリッド車(HEV)用パワートレインの開発で協力することを発表している。提携の成果はメルセデス・ベンツとその中国のパートナーに加えて、ボルボを含むジーリーホールディング傘下の各ブランドでも利用することを前提としている。研究開発拠点や生産拠点はジーリーホールディングとメルセデス・ベンツの両社で活用し合う方針だ。
ジーリーホールディングとルノーグループの新会社は、発足後すぐに想定される取引先としてジーリーホールディング傘下の各ブランド(吉利汽車、ボルボ、Lynk&Co、プロトンなど)、ダチアブランドを含むルノーグループ、さらに日産自動車や三菱自動車を挙げている。過去に資本業務提携やエンジンの相互供給などで協力していたルノーとメルセデス・ベンツは、ジーリーホールディングを介して再度接近することも考えられる。
日産自動車 社長の内田誠氏は、ルノー日産三菱のアライアンス以外の第三者のパートナーが関わることについて「電動化は各国のスピードやユーザーの受け入れが違うので、それに合わせてルノーが別のパートナーと協業するのは自然な流れだ。日産としても、パートナーとともに日産の価値を上げていくのは自然なことだ。ルノーが発表した新会社に日産が参加するのであれば、日産としてのメリットや、協業をどうやって進めていくのかを議論していくことになる」とコメント。ルノー日産三菱のアライアンスが競争力をつけることだけでなく、それを個社の成長にどのようにつなげるかが重要であると述べた。
アライアンス以外のパートナーが関わる中で知的財産の扱いがハードルになると報じられている件については、「ビジネスの変革の中で、どんなパートナーと何を価値にしていくのか、各社の強みがどうなっていくのか、それに関わる知的財産をどう扱っていくのか、普通にビジネスをやっていく上で当然のことだ」(内田氏)とコメントした。
日産自動車は電気自動車(EV)だけでなくシリーズハイブリッドシステム「e-POWER」も含めた電動化戦略を推進している。可変圧縮比エンジン「VCターボエンジン」を発電用エンジンとして採用して日欧中に展開する他、発電専用エンジンの熱効率向上によるe-POWERの燃費改善などに取り組んでおり、自前のエンジン技術で電動化においても差別化や競争力向上を図ろうとしている。
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