他方、国防総省全体でみると、2018年12月に「国防総省クラウド戦略」(関連情報、PDF)を策定するなど、クラウドコンピューティングの導入を積極的に推進してきた。同戦略は、以下のような構成になっている。
本戦略の中で、図1は、ハイブリッドクラウド環境やマルチベンダー環境の最適化に向けた先導役としての国防総省を示したものである。
国防総省は、オンプレミスやプライベートクラウド、パブリッククラウドから成るハイブリッドクラウド環境やマルチベンダー環境を念頭に置いたクラウド戦略を策定している点が特徴だ。
クラウドセキュリティに関連して、米国には、「連邦情報セキュリティマネジメント法(FISMA)」に準拠した「FedRAMP(Federal Risk and Authorization Management Program)」(関連情報)という連邦政府共通のクラウドサービス調達のためのセキュリティ基準がある。これに対して、国防総省傘下の国防情報システム局(DISA)は、「国防総省調達規則附則(DFARS)252.239-7010 クラウドコンピューティングサービス」(関連情報)に準拠した「クラウドコンピューティング(CC)セキュリティ要求事項ガイド(SRG)」を策定/公表している。現時点の最新版は、Version 1, Release 4(2022年1月14日付、関連情報)である。
CC-SRGでは、セキュリティの要求レベルについて、「インパクトレベル(IL)」を設定している。当初、インパクトレベルは6段階が設定されていたが、現在は、表2に示す通り、レベル2、4、5、6の4段階が使われている。
例えば、本連載第92回で取り上げたクラウド利用型ロボット支援手術(RAS)システムを国防総省傘下の医療施設に導入する場合、CC-SRGの要求事項をクリアしたクラウドサービス上に実装することが前提条件となる。その上で、本連載第19回で触れた保健福祉省(HHS)の「HIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act of 1996:医療保険の携行性と責任に関する法律)とクラウドコンピューティングに関するガイダンス」(関連情報)などを順守することが必要である。
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