古田氏は「顔認証技術を用いる実際の現場環境は、明るさがまちまちだったり、カメラを向いていなかったりすることもある。また、年月の経過によって登録時からユーザーの顔が変わっていくが、そうした環境変動や経年変化にも強いことを証明している。どちらかに強いということは他社でもあるが、両方強い企業は珍しい」と説明した。
この実現を支えているのが、CNN(畳み込みニューラルネットワーク)と注目すべき特徴量抽出に強みを持つ機械学習のモデル「Transformer」を融合させたアーキテクチャである。
パナソニック コネクトによると、CNNは目や鼻などの顔の特徴を抽出して、本人確認を高精度で行えるが、顔の向きが変化すると対応が難しい。一方でTransformerは、顔の向きが変化しても目や鼻など顔の一部分の位置を抽出しやすいものの、本人確認の正確性は低くなる。そこで両者を組み合わせることで、顔向きの変化や逆光環境でも高精度で認識できる顔認証技術を実現することに成功した。CNNとTransformerのアーキテクチャ融合には一定のノウハウが必要で、この点に長年顔認証技術の開発に取り組んできたパナソニック コネクトの知見が生かされており、他社が容易に模倣できない機構を作り上げているという。
顔認証の認証速度を向上させるために、深層学習技術の軽量化にも取り組む。高精度化を目指すと認証速度が遅くなりやすいが、速度と精度を両立する現場で扱いやすい技術開発を目指している。
利用者に配慮したUXデザインについては、ハードウェアだけでなくソフトウェアサービスを含めたユニバーサルデザインを実践している点や、「人間中心設計(HCD:Human Centered Design)」の専門家などが多数在籍している点を挙げた。顔認証の入場/決済サービスや顔認証付きカードリーダーなどでは、デザイン賞を複数受賞した実績もある。ハードウェアの設計については顧客企業が設置しやすく、利用者が使いやすいデザインを心掛けているとした。
パートナー企業との共創活動については、2020年に開始した「顔認証クラウドサービス パートナープログラム」の加入企業が130社以上に上る点などを挙げた。同プログラムには現在、日立製作所やソリトンシステムズなどが加入しており、新製品や新システム、技術開発などで連携している。
古田氏は「研究開発部門と密接に連携することで、顧客の現場ニーズにもすぐに対応しやすい環境が実現できている。認証の精度や速度など、顧客によって求める要件は異なるが、柔軟かつ導入しやすい顔認証システムの提供を目指していきたい」と語った。
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