騒音対策では、振動速度を測定する必要があります。一方、振動問題の多くは加速度を下げるのではなく、変位を下げたい場合がほとんどです。よって、振動速度と変位の測定が必要です。
ここで、「Excelのデータになっているのだから、そこで積分すれいいのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ではやってみましょう。
図3はExcelに取り込んだ振動加速度波形です。単純な減衰振動なので、振動速度と変位も単純な減衰波形となるはずです。
図4に加速度波形を時間で積分したものを示します。図4左図は速度です。Peak-to-peak値は読み取れそうですが怪しくなってきました。図4右図はそれを積分したものです。これは全然ダメですね。元の波形の取り込み時にACカップリングをしてDC成分は除去していますが、こうなりました。図4左図のA部(赤色○部分)で速度が低下傾向なのは、加速度の初期値がゼロではなく少しマイナス値のDC成分があるからのようです。しかし、それを除去しても結果はあまり変わりませんでした。積分操作は少しの誤差があってもそれが積算されて増えていきます。積算されたものが次の積算で相殺されればいいのですが、そうならないのが常です。というわけで、Excelでの積分は断念せざるを得ません。
PCB Piezotronicsには、480B10型の電源が用意されています。中にアナログの積分回路が2個入っていて、速度信号と変位信号を出力します。図1の電源のアナログメーターの左にトグルスイッチのようなものを描いたのですが、これを切り替えると出力を加速度、速度、変位に変更できます。その仕様を表2に示します。
加速度 低周波感度(-5%) | Hz | ≦0.07 |
---|---|---|
速度 低周波感度(-5%) | Hz | ≦8 |
変位 低周波感度(-10%) | Hz | ≦15 |
表2 480B10型の電源の低周波側周波数特性(参考文献[1]) |
これを使うと、速度と加速度が測れます。この測定結果を図5に示します。被測定物は宙に浮いているわけではないので、速度と変位の最初と最後はゼロのはずです。実際、そのようになっています。多分信頼できるデータだと思います。積分回路の前段に、絶妙に調整されたDCカットフィルターが入っているのだろうと推察します。480B10はいい仕事をしています。
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