TriOrbは「日本ものづくりワールド 2023」で球駆動方式の全方向移動ロボット「TriOrb Base」を披露した。
TriOrb(トライオーブ)は「日本ものづくりワールド 2023」(2023年6月21〜23日、東京ビッグサイト)内の「第28回 機械要素技術展」に出展し、全方向移動ロボット「TriOrb Base」を披露した。
TriOrbは科学技術振興機構の大学発新産業創出プログラムにより、2023年に設立された九州工業大学発の協調移動ロボットベンチャーだ。コアとなる技術は、3つの球体と3つのモーターにより全方向に自由自在に走行できる、球駆動方式の全方向移動機構となる。1つのモーターが2つの球を回し、1つの球は2つのモーターから運動ベクトルを受け取っている。
既存の全方向移動ロボットの足回りによく用いられているのが、タイヤの外周に車軸に対して45度傾けたバレル(樽型のローラー)が並ぶメカナムホイールと呼ばれる車輪だ。ホイールの回転方向や速度を制御することで、直線方向だけでなく、さまざまな方向に移動することが可能になる。
一方で、メカナムホイールは段差の乗り越えなどに課題があった。通常、タイヤは直径の10〜20%の高さの段差を乗り越えることができるが、メカナムホイールでは移動方向によってはバレルの高さの10〜20%しか越えられないという。球駆動方式はこの問題を克服することに成功した。
TriOrb 技術開発主任の戸部田雅一氏は「メカナムホイールは転がる方向によって運動特性が変わるという課題もあった。TriOrb Baseは世界で初めて全ての方向にちゃんと動く移動機構となる。床面に凹凸があるような既存の建物の狭い空間でロボットを動かしたいというニーズがターゲットになる」と語る。
TriOrb Baseは全高15cm、最小全幅45cmという低床、コンパクトな躯体となっており、1台で300kgまでの積載物の搬送、けん引が可能でmm単位の正確な移動もできるという。制御プログラミングの言語としてはC++とPythonに対応している。
TriOrb BaseはAGV(無人搬送車)など搬送装置の足回り向けに開発している。戸田建設と建設現場における自律型全方向移動ロボットを用いた資材搬送装置開発に向けた共同研究をスタートしており、複数台連携などの機能の追加も目指している。戸部田氏は「創業メンバー全員が九州出身だ。九州の工業系大学出身者から見ると、福岡は関西や中部、東京に比べて就職先が少ない。われわれは工業系大学を卒業した学生が楽しく働けるような会社をつくっていきたい」と話す。
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