新型アルファード/ヴェルファイアの意匠を実現した「体脂肪率ゼロ」車両デザイン(2/2 ページ)

» 2023年06月22日 11時30分 公開
[齊藤由希MONOist]
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 ミニバンの側面が平板になってしまうのは、スライドドアの機構が要因の1つだ。ドアを開けるときにはドアをリフトした後で横に移動するが、抑揚をつけて側面の凹凸が大きくなるとリフトする量が増える。これにより、スライドドアのレールが室内側に張り出す部分も大きくなり、2列目シートの乗員の肩から内装までの空間に影響が出てしまう。

 今回のフルモデルチェンジでは全幅を1850mmに抑える必要があり、全幅を広げることで抑揚を大きくつけることは難しかった。また、快適な移動空間であることを重視する以上は、室内を犠牲にしてデザインを優先することもできない。へこんだ部分をつくることで他が膨らんでいるように見せるため、ドア内部のインパクトビームなどの配置や後部座席向けのエアコンユニットのレイアウトなどを少しずつ調整して、ミリメートル単位でスペースを削った。これを体脂肪に見立て、「体脂肪率ゼロパッケージ」をキーワードに掲げて検討を進めたという。

サイドシルエットのデザイン表現[クリックで拡大] 出所:トヨタ自動車

振動は従来の3分の1に

 動くオフィスやプライベート空間として利用できるよう後部座席の快適性を高めるため、基本骨格を見直すとともに振動やノイズの低減を徹底した。車台はTNGAプラットフォーム「GA-K」をミニバン用に最適化。ロッカーをストレート構造とし、車体底部の後方にはブレースをV字型に設けることで車両剛性を従来モデルから50%向上させた。

 構造用接着剤の使用量は5倍に増やした。乗員の足元には高減衰タイプを、車両後方のねじれが発生しやすい箇所には高剛性タイプの構造用接着剤を塗布している。通常のタクトタイムで塗布量を増やせるよう工夫したという。

 サスペンションは、フロントをTNGA用のマクファーソンストラット式に刷新し、リアは従来のダブルウィッシュボーン式をベースに新開発した。地面から伝わる振動の周波数に応じて減衰力を機械的に可変させる周波数感応型ショックアブソーバーを設定し、操縦安定性と振動吸収を両立している。2列目のシートにはクッションフレームの取り付け部分にゴム製のブッシュを配置した他、背もたれやアームレストに低反発フォームパッドを採用した。さまざまな防振の工夫により、乗員に伝わる振動を従来モデルの3分の1まで抑制した。

 ロードノイズや風切り音の対策としては、新開発の低騒音タイヤ、カウルへの吸音材の配置、エンジンフードの先端やドアミラー、フロントピラーなど風圧を強く受ける部位の形状の最適化などを実施した。

ボディー剛性は従来モデルから50%向上させた。振動低減にもこだわった[クリックで拡大] 出所:トヨタ自動車

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