揚羽はブランディングの支援を行う企業で、採用プロモーションの事業から始まった同社は、これまで数千人を超える「働く人たちの声」を取材しており、多様なブランディングに対応している。例えば、企業の魅力を学生に伝える「採用ブランディング」や従業員に企業の魅力を伝える「インターナルブランディング」、一般消費者に伝える「エクスターナルブランディング」を行っている。
同社のブランディングでは、現場に立脚した調査分析、調査に基づいた戦略立案、総合的なクリエイティブ開発、ステークホルダーをファン化の順に行うサイクルを繰り返すことで、調査分析からターゲットとの関係づくりまでを実施している。
レゾナックが昭和電工や旧日立化成から変化した理念や仕組みを従業員に伝達するためのコミュニケーションデザインを作成する際に揚羽は協力した。レゾナックは揚羽にコミュニケーションデザインの共創を依頼した理由として、「インターナルブランディングの考え方の部分から、各種コミュニケーションチャネルでの豊富な他社事例含めて提案してもらった。Howから入るのではなく、What/Whyをしっかり考えましょうという話が印象に残っている」「揚羽の協力により、社員コミュニケーションに統一感やストーリー性を持たせられると考えた」を挙げている。
レゾナックからコミュニケーションデザインについて相談された揚羽は、積み上げてきた文化と強みといった過去の資産や取り巻く環境などの現状認識、将来のありたい姿、戦略をストーリー性を持って従業員に伝えることが、社内(インナー)コミュニケーションのデザインで重要だ、とレゾナックにまず提言した。
その後、レゾナックとオリエンテーションを行い、従業員への対話を重要視していることを確かめた。続いて、人の行動は、モチベーションや能力、トリガー(きっかけ)が関係しているというフォッグ式消費者行動モデルをベースに、感情に働きかける取り組みをモチベーションに位置付け、レゾナックが創出した機会(さまざまなプログラムなど)を人の情緒に寄り添うデザインに落とし込みトリガーとすることで、従業員に変革を促すことを目指した。
トリガーとなるデザインを作成するために、まず、レゾナック CEOの高橋氏とCHROの今井氏に新人事制度の導入背景や将来のありたい姿のインタビューおよび社内コミュニケーションで実現したいことをヒアリングした。次に、インタビューとヒアリングに基づき、「ありたい姿のストーリー文章化およびキャッチフレーズ化」と「世界観のビジュアル化」を行った。
ブランドコンサルティンググループ シニアプロデューサーの佐藤考良氏は「ありたい姿のキャッチフレーズとして『自分にもっと驚こう』を作り、このキャッチフレーズのビジュアル化も行った」と述べた。
これらをメッセージムービーやスタイルブック、デベロップメントガイド、イントラネット上特設サイトで活用し、コミュニケーション支援ツールとして用いた。
例えば、スタイルブックは、行動や仕事の進め方、コミュニケーションの姿など、さまざまなスタイルのこれまでとこれからのありたい姿をイメージで伝える電子ブックとなっている。デベロップメントガイドは、共創型人材になるために必要な社内の仕組みの活用法やキャリア形成の考え方などを学べるガイドブックだ。
こういったコミュニケーションツールについて、レゾナックの従業員からは「CxO(チーフ/エクスペリエンス/オフィサー)陣から『デベロップメントガイド』が好評だ。CHRO組織内の制度立案のチームからは、きれいに整理して表現してくれてありがたいという声があった」「他部署より『どうやってつくったんですか』と相談を受けた他、関連会社の人事担当からは、このデザインを使わせてほしい、このコピーを使いたい、という問い合わせを受けた」と好意的な意見が寄せられた。
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