製造業のDXプロジェクトはなぜ失敗してしまうのか?(後編)DX時代のPLM/BOM導入(13)(1/5 ページ)

今回が本連載の最終回です。DX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクトが失敗する原因について、グローバル製造業の経営企画部門所属の音更さんと経営コンサルタントの鹿追さんに、BOM(部品表)やPLMを軸に議論してもらいましょう。

» 2023年06月13日 08時00分 公開

 今回は本連載最終章の後編です。DX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクトの失敗原因について、残り3つを、グローバル製造業の経営企画部門所属の音更さんと、経営コンサルタントの鹿追さんに話し合ってもらいましょう。

⇒連載「DX時代のPLM/BOM導入」のバックナンバーはこちら

本連載の登場人物

音更しほ(おとふけ しほ):大学の工学部を卒業後、とあるグローバル製造業の経営企画部門に配属された入社3年目の社員。会社の戦略で、グローバル製品開発を可能にする情報基盤の企画を担当することに。PLMやBOMについて勉強中。


鹿追然(しかおい ぜん):製造業特有の業界事情に詳しく、製品開発やPLM、サプライチェーンマネジメント(SCM)の業務改革経験も豊富。経営コンサルティング会社「鹿追コンサルタント」を率いる。


(※)編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物、団体などとは一切関係ありません。

失敗原因を教えていただく回の2日目ですが、昨日からとても大事な話を教えてもらっている気がします。


PLMの要件定義手法やシステム技術の勉強も大切ではあります。ですが、ここで話していることが実践できないと、結局DXに投資しても会社としての成果につながらないことが多いのです。前にもお話しましたが、私はコンサルタントの立場でプロジェクト支援をさせてもらっていますが、失敗パターンに陥っていないか診断するだけで、プロジェクトの成否を予測できると言っても過言ではないと思っています。


全てお見通しということですか。怖いですね(笑)。


でもそのポイントを全て公開するのですから、怖くはないですよ(笑)。


だから勉強しているのですよね! では今日もお願いします。


(5)経営幹部がプロジェクトに関心がない

本日最初の失敗原因は「経営幹部がプロジェクトに関心がない」です。


あー! 身につまされるご指摘です。当社の役員もDXプロジェクトでもキックオフくらいは参加して、激励の言葉をくれるのですが、内容が詳細になるにつれて、フェードアウトしていくことが多いです。


社員は役員の関心について、とても敏感です。当初、プロジェクトに関心があるように見えても、途中から興味がなくなっているように感じれば、それが社員にも伝わり、プロジェクトの求心力や成果にも影響が生じかねません。


IT用語が難しい、ITシステムが複雑化し、役員の方が理解できなくなってしまうことが理由としてあると思いますが、長いプロジェクトでは、年度をまたぎ、役員が人事異動になることもあるので、そもそも体制を維持できないこともあります。


確かに何年も長期間、関心を持って、指示していただくことは難しいかもしれません。私はプロジェクトのキックオフの時に、経営幹部の方、多くはプロジェクトオーナーの役割を担当される方に対して、プロジェクトに少なくとも1年半は注力して、定期的にご助言するようにしてください、とお話をします。


「1年半」という根拠は何ですか?


次の図を見てください。プロジェクトの進行例ですが、「企画フェーズ」「実行フェーズ1」「実行フェーズ2」と進行しています。1年半が経過し、通常この段階まで来ると、プロジェクトの成果はある程度見え始めます。プロジェクトメンバーが独り立ちして成果創出できるようになるまで、経営幹部の方のご支援、後ろ盾が必要な期間が一般的に1年半くらいです。


プロジェクトの進行と、経営幹部の関与[クリックして拡大]

逆に言うと、この期間でプロジェクトメンバーは独り立ちをせねばならないということです。この期間は、私の経験上設定したもので、15年くらい前に言い始めたことですが、DX時代の今でもそれほど変わっているとは思いません。


なるほど。当社の経営幹部にも鹿追さんからぜひ同じ話をしていただきたいです(笑)。


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