From-Toチャート分析法は、一言でいえば、前後の作業工程の関係をマトリックス(格子状)形式で表す分析手法です。「流入・流出図」や「クロスチャート」といわれることもあります。From-Toチャートで表す図は、部品ごとの工程分析表により「前工程のどこから(From)」「後工程のどこへ(To)」移動するかの関係を運搬(移動)距離や運搬物の重量などの数値を使用してマトリックス形式で表示します。運搬距離や物の移動方向のムダを明確化することで、流れが逆行している、異常に運搬量の多い製品群があるなどの問題点を把握することができます。
ジョブショップ(Job Shop)において、レイアウトなどを検討する場合に用いる分析手法で、前工程と後工程の関係を定量化して、前後工程の相互関係を明確化させます。
この分析手法は、機械設備の効率向上、動線の短縮による人的効率の向上、作業効率の向上、スペース効率の向上、仕掛かり量の削減、在庫量の削減、レイアウト計画の立案などを目的として用いられます。特に、機械設備の効率向上と人的効率の向上に効果的な手法です。
製品や部品が決められたルートに従って流れるフローショップ(Flow Shop)とは異なり、ジョブショップでは、部品によって経路が異なり、レイアウトや工程設計の良否によって運搬のムダが発生しやすいという特徴があります。
工程設計の種類として、フローショップとジョブショップの2種類のレイアウト方法があります。フローショップは、部品や製品の加工順序に沿って作業工程や機械設備を配置して、部品/製品に対する機械設備や工程の配置は“1対1”で対応しており、配置された順序に従って物が流れて行き、不良品の修理や再生の発生以外で逆流することはありません。生産管理の面では、原則として初工程と最終工程を管理すればよいので、管理がやりやすいという特徴があります。
一方、ジョブショップは、切削や溶接など同一の加工目的の機械設備群ごとに機械設備が配置され、部品/製品は工程や機械設備に特に対応しておらず、任意の設備から任意の設備へと物が移動して行き、流れも正流や逆流が常に発生しています。生産管理は、おおむね同一加工の機械設備群の個別の機械設備ごとに必要なので、管理が複雑になるという特徴があります。From-Toチャート分析法は、このようなジョブショップの前工程と後工程の関係分析を対象とします。
From-Toチャート分析法の作図事例を図2に示しました。縦欄と横欄に、部品/製品が生産過程で通過する全ての工程を同じ順序で記入し、縦欄をFrom(〜から)、横欄をTo(〜へ)として、1回当たりの運搬距離(m)に1日の運搬回数を乗した延べ運搬距離(m/日)をその交差する欄に記入します。この分析結果によって各工程間をどれくらい近接させるべきかの必要度合を知ることができます。From-Toチャートの作成手順は以下の通りです。
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加工経路(図)分析法は、物や人および運搬設備の動きを系列的に分析把握する方法であって、運搬されていく経路がどういう状態になっているかを調査して分析する手法です。従って、運搬量の大きいものから経路の条件を優先的に考慮し、経路の迂回(うかい)、曲線、逆行などをなくしていきます。具体的には、工場内に置かれる物の位置や配置場所などの抜本的な改善対策への手掛かりとします。
一方、From-Toチャート分析法は、縦欄と横欄に、部品/製品が生産過程で通過する全ての工程を同じ順序で記入し、調査過程のまとめ方として縦欄をFrom、横欄をTo として、各工程間を移動する回数をその交差する欄に数値またはチェックで記入していきます。その後、工程間の運搬距離に運搬回数を乗じた数値を日当たり延べ運版距離として図の中に記入してまとめていきます。この分析によって各工程間の近接の必要度合を知ることができます。その結果から、「流れ」および「アクティビティー」の相互関係が分かり、レイアウトの骨格を作ることができます。
重要なのは、量的特性の分析、流れおよび相互関係の分析によってレイアウトの骨格を論理的に導くところにSLP手法の特色があります。細部レイアウト計画の場合などでは、この段階からすぐに模型を用いて検討する段階に入ることも可能となります。
MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)
日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。
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