さらに、「4.プラクティスの現状」では、リスク管理のプラクティスの一つとして、「NIST SP 800-37改訂第2版 情報システムと組織のためのリスクマネジメントフレームワーク(RMF):セキュリティとプライバシーのためのシステムライフサイクルアプローチ」(2018年12月20日公開、関連情報)を挙げている。図2は、NISTリスクマネジメントフレームワークより、組織全体のリスクマネジメントアプローチを示したものであり、「レベル1:組織」「レベル2:ミッション/ビジネスプロセス」「レベル3:情報システム」の3階層から構成される。
バイオテクノロジーやバイオ製造で利用される医療機器やアプリケーションの実装/運用はレベル3に該当するが、リスクマネジメントに関わる人員、予算などの計画については、レベル2やレベル3が意思決定に関与する。従って、単一レベルを越えたリスクマネジメント体制やコミュニケーションとレポーティングの仕組みの構築が重要になる。
その上で、NISTリスクマネジメントフレームワークの実装に欠かせない、以下の7つのステップおよび手順を参照している。
ゲノムデータサイバーセキュリティ第1草案では、上記のステップとゲノムデータの関連性について表2のように整理している。
「4.プラクティスの現状」では、連邦政府機関によるリスク管理のプラクティス事例として、国立衛生研究所(NIH)を挙げている。なお、データリスク管理に関連してNIHでは、2023年1月25日より、「データ管理・共有(DMS)ポリシー」(関連情報)を施行している。
NIHは、同研究所の資金を受けて、科学データを利用した研究を行うプロジェクト(米国外を含む)の責任者に対して、DMS計画を策定/提出し、承認された計画を順守するよう求めている。DMS計画に含まれる要素として、以下のようなものを挙げている。
これまでNIHが運用していた「ゲノムデータ共有(GDS)ポリシー」(関連情報)も、新たなDMSポリシーに統合された。NIHの資金助成を受けたゲノムデータ関連国際共同研究プロジェクトに参画する日本国内の教育/研究機関や民間企業は、DMSポリシーに準拠したデータリスク管理体制を構築/運用する必要がある。
その他、「4.プラクティスの現状」におけるサイバーセキュリティのプラクティスとして、本連載第35回で取り上げた「重要インフラのサイバーセキュリティを向上させるためのフレームワーク(NISTサイバーセキュリティフレームワーク)1.1版」(2018年4月16日公開、関連情報、PDF)、第86回で取り上げた「NIST SP 800-207 ゼロトラストアーキテクチャ(2020年8月11日公開、関連情報)、米国防情報システム局(DISA)の「セキュリティ技術実装ガイド(STIGs)(関連情報)を参照している。また、国際的なリスク管理のプラクティスとして、ゲノミクスと健康に関するグローバルアライアンス(GA4GH)の「ゲノム及び健康関連データの責任ある共有に関するフレームワーク」(2014年9月10日初版公開、関連情報)などを参照している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.