新エネルギー・産業技術総合開発機構らは、水耕栽培の液肥に含まれるカリウムイオンの安定的な計測技術を確立した。開発した有機半導体センサーを用いて液肥を一定濃度に制御し、レタスの栽培実験に成功している。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2023年4月17日、NEDOの「人工知能技術適用によるスマート社会の実現」事業の一環として、東京大学、ファームシップがフィルム状の有機半導体センサーを開発したと発表した。同センサーを用いて、水耕栽培の液肥を一定濃度に制御し、レタスの栽培実験に成功した。
近年、生産が拡大している植物工場では、液肥成分の濃度を多地点で計測する機器が必要とされている。今回の研究では、東京大学が開発した有機半導体を用いたイオンセンサーを組み込み、液肥成分の検出装置を製作。液肥中にある有機半導体の電気伝導度は、隣接イオンとの電気的相互作用によって変化するため、この原理を利用するとイオン濃度の測定が可能となる。
開発した有機半導体は、大気中で塗布できるため、安価で大面積な有機半導体単結晶薄膜が得られる。これをフィルム基板上に成形して、電気二重層トランジスタとして利用する。電気二重層トランジスタにイオン選択感応膜を搭載すると、水溶液中のイオン濃度を測定できる。
同技術を用いて、野菜成長成分として重要なカリウムを対象としたセンサーを開発。植物工場の水耕栽培では、長方形の液肥プール内に植物を入れ、中の液肥を浄化しながら循環させる方式が一般的だ。開発したセンサーを用いて液肥の主要成分であるカリウムイオンを検出し、液肥の一定濃度制御に成功した。
また、同イオンセンサーを用いて、小型の水耕栽培液肥濃度安定化システムを構築。液肥を一定濃度に制御してレタスの栽培実験に成功した。
今後はセンサーの精度や安定性を検証し、生産現場に適用できるシステムを開発する。温室内での養液栽培や、農業で広く使われるイオンセンサーへの検討、多種類の感応膜を一度に形成したマルチイオンセンサーへの適用も検討していく。
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