「残り20%の強み」を活用し日本の製造業が新たなビジネスモデルを構築していくためには、何が必要になるのだろうか。まず、製造業が自社のモノづくりのアウトプットとして製品やサービスのみで勝負するのではなく、モノづくりで培った技術やノウハウをデジタル技術によりソリューション化し、他企業を支える事業モデルとして展開していくことを「ものづくりプラットフォーム」とここでは呼びたい。
他社製造業を支えて収益を得る「ものづくりプラットフォーム」と聞くと、ノウハウ流出や、それによる競争力低下を懸念する企業も多いだろう。 しかし、2つの点を押さえることで、進めやすくなってきている。
1つ目が「コア(競争領域)と非コア(協調領域)の振り分け」である。当然ながら誰にもまねできないコアの技術を他社に提供すると、自社の競争力は失われてしまう。しかし、自社の業務内容や技術内容を分析してみると、全てがコアであるわけではないはずだ。過去のノウハウ供与を通じた日本企業の競争力低下は、こうした振り分けができておらず、コアも含めて人や設備が流出してしまったことが大きい。「何を競争力の源泉として守り、何を外販する部分として切り出すのか」、さらに「何を外部技術や外部企業を活用しリソースの効率化を図るのか」という検討が重要になっている。
2つ目が、デジタル技術が進展する中で「ノウハウ流出を防ぐ方法論」が確立されつつあり、それを活用するということだ。今までは設備や、人を通じた属人的な技術伝承が基本であった。日本企業は、提携企業や現地合弁会社に技術者を派遣し、丁寧に現地人材を育成し、人を通じて技能移転を図ってきた。その結果、技能移転に時間がかかることに加え、育ったタイミングでヘッドハントされ、技術やノウハウが人ごと流出してしまうことが起こりがちだった。ノウハウや技術をデジタル化することで、必要な技能の一部をシステムで実現できるようにする。そうすることで、人への依存度を下げるとともに、技能移転のしやすさを実現する。例えば、オペレーションモデルや、解析/分析結果、具体的な指示はAR(拡張現実)やIoTを通じて効率的に移管をする。一方で裏側の「本質」部分はブラックボックスとして自社側に残すことが可能となる。
日本企業の「ものづくりプラットフォーム」の展開としては、設計力や生産技術力、ケイレツの構築、サプライチェーン管理力、工程/現場ノウハウ、製造能力などの対象ごとに図3のような先行事例が生まれてきている。日本企業として、デジタル時代に即したものづくりプラットフォーム展開が進むことが期待される。
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