水素を手軽なエネルギーに、トヨタがポータブルカートリッジと周辺機器を開発中脱炭素

トヨタ自動車は「第13回国際スマートグリッドEXPO」において、ポータブル水素カートリッジの周辺機器を披露した。

» 2023年03月27日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 トヨタ自動車は「第13回国際スマートグリッドEXPO」(2023年3月15〜17日、東京ビッグサイト)において、ポータブル水素カートリッジの周辺機器を披露した。

 ポータブル水素カートリッジは、2022年6月に発表した小型の高圧水素タンクだ。満タン時の重量が5kgなので、持ち運んだり移動させたりしやすい。生活の中で水素を使いやすくすることを目指している。車載用の水素タンクを応用した据え置き型と使い分けられるようにすることで、利便性を高める。

ポータブル水素カートリッジと発電機(左)。内部にポータブル水素カートリッジ2本を収められる(右)[クリックで拡大]

 第13回国際スマートグリッドEXPOでは、ポータブル水素カートリッジを使った発電機や、リンナイと共同開発した水素が燃料の調理用グリルを披露した。ポータブル水素カートリッジは、グリルの燃料としては1本で6時間、電気としては1本で3.3kWh相当で電子レンジを3時間動かすことができる。

 ポータブル水素カートリッジを使った発電機には、開発中の小型燃料電池を内蔵している。冷却方式を空冷とすることで車載用で量産している燃料電池よりも小型化する。小型の燃料電池によって、自動車以外で水素を活用できる場所を増やす。調理用グリルは、富士スピードウェイ(静岡県小山町)に併設されているホテルでゲスト向けに使用している。

開発中の小型燃料電池を内蔵[クリックで拡大]

 ポータブル水素カートリッジは70MPaの高圧タンクなので、高圧ガス保安法の要求事項をクリアすることが実用化に向けて必須となる。また、一般のユーザーが取り扱うに当たって、さまざまな保管状況に対応するとともに、安全に使用できるようにする。ウーブンシティー(静岡県裾野市)での実証を重ねながら改良していく。

プロパンガスやカセットボンベのように

 ポータブル水素カートリッジは、カセットボンベのように必要なときに購入したり、プロパンガスのように配達/回収してもらって使用量に応じて料金を支払ったりする想定だ。家庭向けに浸透しているプロパンガスの輸送網を通じて水素も流通できれば、ガス事業者の新たな収益にもなり得ると見込む。水素を家庭で安全に利用できるようになれば、水素の使用量拡大が期待できる。

 海外では電動モビリティ用の小型の水素カートリッジを自動販売機で販売するコンセプトを発表した企業も出てきているという。乾電池のように水素カートリッジの大きさや仕様をそろえて周辺機器を充実させることや、水素ステーション以外に水素を入手できる場所や方法を増やすことが水素活用を浸透させるカギになる。

リンナイと共同開発した水素が燃料のグリル[クリックで拡大]

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