全ての基本造形には面があり、球以外の基本造形には稜線と角があります。造形表現とは、これら基本造形の面や稜線、角に特徴を付けることを指します。
面や稜線に特徴を付ける方法はいくつかありますが、本稿では最も代表的な造形表現手法である角Rを例に解説していきます。
直方体にRを付けて造形表現する場合、その表現の幅はRの「場所×大きさ×順序」の組み合わせだけ存在します。ここで覚えておく必要があるデザイン基礎知識は、角Rの大きさとその順序には御法度(禁止事項)があるということです。
それは「小さい角Rの後に、大きい角Rを付けてはいけない」ということです。特に製品の意匠性を求められるような場所では注意が必要です。
図3に示すように、小さいRの後に大きいRを付けてもかたちとして成立しないわけではありません。しかし、意匠の観点からするとこの状態は“かたちをコントロールできていない”ように見られてしまいます。従って、角Rを付ける際にはできるだけ大きいRから付けていくように心掛けてください。それが御法度に触れないためのコツです。
以上を順守することを前提に角Rを付けていけば、同じ立方体でも角Rの付け方次第でさまざまな表現の種類が作れます。
角Rの大きさや順序による表現は、設計観点では気にとめる必要のないことですが、デザイナーの行う意匠設計業務では、特に気を使って行われる作業の1つです。このようなデザインならではのお作法は、書籍にもWeb上にも載っていませんが他にも多く存在します。
ここまでは、いずれも単一のかたちの種類についての話でしたが、次はかたちの組み合わせです。
複数の機能や複数の部品を持つ製品が、単一の基本造形だけで構成されていることはほとんどありません。例えば、前回例に挙げた「手のひらサイズの通信機器」には本体とスイッチの2つの構成要素があります。そして、そのデザインを進める際、それぞれのかたちは独立して定義することが可能です。例えば、本体とスイッチの基本造形を丸と四角で考えた場合、そのかたちの組み合わせは4種類あります。
基本造形の組み合わせによるかたちの種類の展開は、立体においても同様に行うことができます。組み合わせの考え方を活用すれば、近い基本造形を組み合わせることで統一感のあるかたちを作ることもできますし、意図的に異なる基本造形を組み合わせることで特徴的なかたちを作ることもできます。
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