図5のドライヤーでは、モーターの回転に伴う振動が筐体に伝搬して持ち手を通して人体にも伝わる。これを評価するには、振動の側面から、筐体の3D情報を1Dに縮退して1D-CAEに取り込みたい。この際に用いられるのが、図9に示す3D-CAEの振動モード情報を縮退して1D-CAEに取り込むROM手法(参考文献[2]〜[5])である。
3D-CAEからマトリクス情報を取得し、必要なモード数に縮退して、状態空間式に変換した後、1D-CAEに入力する。この方法は、対象とする振動現象が比較的低次のモードの場合に、特に効果を発揮する。
図10に、ギアケースの振動設計への適用例を示す。ギアとケースの接続部分から振動がギアからケースへ伝搬するモデルになっており、ギア機構部に関しては1D-CAEでモデリングし、ケースを3D-CAEの振動モード情報を縮退して1D-CAEに取り込むROM手法で1D化している。ここで、精度良く評価したいケースのモードが4次までとすると、実際に3D-CAEから取り込む縮退モデルはこの数倍の高次モードまで必要となる。
以上により、ギア部を起点とした振動により発生するケースの振動を再現することが可能となる。すなわち、加振源であるギアに起因する振動と、これによって誘起されるケース振動を、3D-CAEと同等の精度で、かつはるかに高速に解くことが可能となる。
一般的なROM手法として、機械学習を用いる方法がある。ただ、やみくもに機械学習を適用しても膨大なデータが必要であるばかりでなく、モデル自体がブラックボックス化してしまい、本来の目的であるデザインに適用することが困難である。そこで、対象を物理現象に限定してこの問題を克服したのが図11に示す機械学習による3D-CAE、実験結果を用いたROM手法(参考文献[6]〜[8])である。
3D-CAEや実験結果など、機械、熱、電気、流体といった物理現象を対象とすることを特徴とする。機械学習による予測の対象を状態空間表現の微分方程式とすることにより、機械学習におけるパラメータ調整の煩雑さを極力除去し、入力データを最小限にできる。
図12に、ソレノイドバルブの流体設計への適用例を示す。最初に、流入圧力2条件(2気圧、4気圧)、バルブ開閉速度2条件(10msec、100msec)の計4条件のCFD(数値流体力学)シミュレーションを行い、2000Hzのサンプリングで4条件合計1600点のサンプリングを取得する。
図12上図に、流入圧力2気圧、バルブ開閉速度、100mescの結果を示す。これを基に、入力をバルブ変位、バルブ速度、差圧、状態量を流量、出力を流量とバルブ荷重として機械学習により1Dモデルを作成する。図12下図に未学習の条件での結果をCFD結果と比較して示す。本手法により、精度良く予測可能であることが分かる。
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