パナソニックHDは中国低迷で通期利益予想を下方修正、梅田CFOは「一時的」を強調製造マネジメントニュース

パナソニック ホールディングスは、2022年度第3四半期の連結業績を発表。前年同期比では増収増益となったものの、中国市況低迷の影響などを受けて2022年度通期の利益目標を下方修正するなど、先行きに厳しさを感じさせる結果となった。

» 2023年02月03日 08時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 パナソニック ホールディングス(以下、パナソニックHD)は2023年2月2日、2022年度(2023年3月期)第3四半期(10〜12月)の連結業績を発表。前年同期比では増収増益となったものの、中国市況低迷の影響などを受けて2022年度通期の利益目標を下方修正するなど、先行きに厳しさを感じさせる結果となった。

中国市況の低迷が先行きの不透明感に

photo パナソニックHD 代表取締役 副社長執行役員 グループCFOの梅田博和氏

 パナソニックHDの2022年度第3四半期の業績は売上高が前年同期比14%増の2兆1606億円、調整後営業利益が同2%減の859億円、営業利益が同16%増の844億円、税引き前利益が同21%増の888億円、当期純利益が同30%増の556億円となった。調整後営業利益以外は全ての項目が前年を上回っており、原材料高騰などの影響が強い中で、合理化や価格転嫁などを進めた成果が表れた結果となった。

 セグメント別では、オートモーティブやコネクトが売り上げを大きく伸ばした。その他部門も前年同期は上回っているものの、インダストリーでは為替影響を除くと減益となりやや苦戦が目立った。営業損益では、くらし事業、インダストリー、エナジーが苦戦し、減益となった。くらし事業では為替や原材料費高騰などの外部環境悪化の影響が強く出た他、インダストリーは中国を中心に急速な市況悪化に伴う減販損が発生。エナジーは車載用電池の原材料高騰と、産業/民生分野の減販損が生じたために大きな減益となった。

 ただ、パナソニックHD 代表取締役 副社長執行役員 グループCFOの梅田博和氏は「市場の状況によっては、市況低迷や原材料費高騰などの外部要因はあったが、これらは一時的なものだと捉えている。決して事業立地が悪いということではなく、状況は変わる。今はできることで対策を進める」と語っている。

photophoto パナソニックHDの2022年度第3四半期(10〜12月)の連結業績(左)とセグメント別業績(右)[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

 ただ、こうした市場環境の変動を受け、2022年度通期の業績見込みについては、下方修正を行っている。売上高については、前回予想比据え置きの8兆2000億円としたが、調整後営業利益は前回予想比400億円減の3000億円、営業利益も同400億円減の2800億円、税引き前利益は同300億円減の3000億円、当期純利益は同250億円減の2100億円とした。セグメント別では、調整後営業利益でオートモーティブとコネクトは上方修正したものの、くらし事業、インダストリー、エナジーを下方修正している。

photophoto パナソニックHDの2022年度第3四半期(10〜12月)の連結業績(左)とセグメント別業績(右)[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

 インダストリーでは修正要因として、主にノートPCを中心としたICT端末関連の需要低迷で営業損益で110億円のマイナス効果が生まれる見込みだ。その他、車載向けではEV(電気自動車)以外のグローバルの需要低迷により40億円のマイナス効果、中国FA向けでは、投資意欲の低迷井より50億円のマイナス効果が発生すると予測する。エナジーについては、産業/民生分野における急速な需要減少と車載分野における原材料の高騰影響が主な要因となる。特に車載向けでは、水酸化リチウムの価格高騰が下期以降に発生し収益を圧迫する見込みだ。

photophoto インダストリーの通期目標下方修正の要因(左)とエナジーの通期目標下方修正の要因(右)[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

米国IRA法で年間23億ドルの税控除を受けられる可能性

 なお、今回の業績発表では、米国で2022年8月に成立したIRA(Inflation Reduction Act)の影響は含んでいない。IRAは、過度なインフレの抑制とエネルギー政策を推進する法律であり、エネルギー関連製品などに対する税控除などを行っている。パナソニックHDでは、EV向け電池などの販売に関する税控除を行うSection 45X(Advanced Manufacturing Production Credit)が対象となり、米国内で生産した電池セルを販売した場合、1kWh当たりで35ドルの税控除が受けられる。既にEV向け電池セルの生産を行っているネバダ工場や、新たに2024年に稼働予定のカンザス工場が対象となる。生産能力による単純計算でネバダ工場では年間約13億ドル、カンザス工場では年間約10億ドルの控除が期待されるという。梅田氏は「IRA法については細則の精査などが進んでいないために今回は織り込んでいない。確認でき次第業績に反映する」と述べている。

photo 米国IRAによる税控除の期待額[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

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