今回の開発成果では、特殊フィルターを貼り付けた市販のVGAサイズ(640×480画素)のCMOSセンサーで「間引き検出」を行ってから、PCのGPUボード(GeForce RTX 2080 Ti)を用いて「復元演算」を行ってハイパースペクトル画像を取得している。八子氏が所属するマテリアル応用技術センター(AMTC)だけでなく、デジタル・AI技術センター(DAIC)や、マニュファクチャリングイノベーション本部(MI本部)と連携することで実現できた。また、センサーの量産性については、ベルギーの研究開発機関であるimecと共同で実施している。
一般的なオフィス照明の明るさである550ルクスの照明の下でハイパースペクトル画像を撮影したところ、従来技術の感度が4%とほぼ真っ暗な画像になったのに対し、新技術の感度は10倍以上の45%となり、カラーカメラと同等の使用感で撮影することができた。
20波長のスペクトル情報の誤差は2〜3%とセンサーノイズレベルであり、撮影結果に大きな影響はなかった。また、感度が高いことに加え、独自アルゴリズムによる「復元演算」の高速化により、静止画だけでなく30fps以上の動画撮影も可能になる。
一般的な数値解析手法である反復計算法を用いる場合でも、VGAサイズのハイパースペクトル画像で30fps以上の動画を撮影できているが、さらにAI(人工知能)を適用することで200fps以上までフレームレートを高めることができた。ハイパースペクトル画像の画素数をフルHD(1920×1080画素)に拡大した場合でも、AI法を使えば30fps以上の動画を撮影できるとしている。
なお、今回の研究開発成果は、パナソニックHDとimecの連名で英国科学雑誌「Nature Photonics」のオンライン版に2023年1月23日に掲載された。
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