買収起点に拡大続けるコニカミノルタのセンシング事業、今後はHSI技術に期待FAニュース(1/3 ページ)

コニカミノルタが新たな事業成長をけん引するインダストリー事業の一角をなすセンシング事業について説明。「光源色計測」「物体色計測」「外観計測」「HSI計測」の4領域で事業を展開しているが、今後は自動車業界向けを中心とする外観計測と、2020年に買収したSpecimのHSI計測により事業成長を果たしたい考えだ。

» 2022年01月19日 06時30分 公開
[朴尚洙MONOist]

 コニカミノルタは2022年1月6日、オンラインで会見を開き、新たな事業成長をけん引するインダストリー事業の一角をなすセンシング事業について説明した。

 同社は、現在の主力のオフィス事業をデジタルワークプレイス事業に転換するとともに、画像IoT(モノのインターネット)ソリューションやセンシング、インクジェット(IJ)コンポーネント、機能材料などから構成されるインダストリー事業によって新たな成長を目指している。今回の会見は、2021年12月15日の画像IoTソリューション事業、同月21日の材料・コンポーネント事業に続いて、センシング事業がテーマとなった。

事業の起点はアポロ8号向けのスペースメーターから

コニカミノルタの亀澤仁司氏 コニカミノルタの亀澤仁司氏 出所:コニカミノルタ

 コニカミノルタのセンシング事業は1968年を起点とする2つの製品から始まっている。1つは、アポロ8号〜11号までの月探査でNASA(米国航空宇宙局)に納入したスペースメーターである。

 同社 上席執行役員 センシング事業本部長の亀澤仁司氏は「人類にとって重要な記録写真を限られた条件の中でしっかり残したいという要望があった。写真フィルムの露出決めのメーターであるものの、過酷な条件を乗り越えた開発だったと記録に残っている」と語る。そしてもう1つは、放送局の局内モニターのバランスを調整するTVカラーアナライザーの開発になる。「その後も、感動と情報をもたらす光と色をはかることで価値に変え、事業と技術を分化させながら現在に至っている」(亀澤氏)という。

コニカミノルタのセンシング事業の沿革 コニカミノルタのセンシング事業の沿革[クリックで拡大] 出所:コニカミノルタ

 現在のセンシング事業は「光源色計測」「物体色計測」「外観計測」「HSI(ハイパースペクトルイメージング)計測」という4つの領域に分かれている。1968年の起点となった製品とつながっているのが光源色計測で、ディスプレイの色調整や、顔認証の光源、生活を支える照明などの発光体を測ることで事業を展開している。物体色計測は光を当ててモノの色や見栄えを測るもので、自動車をはじめとする工業製品の外装色の管理や、色による品質の違いなど、品質管理の用途に対応している。

センシング事業の4つの領域 センシング事業の4つの領域[クリックで拡大] 出所:コニカミノルタ

 外観計測は、自動車やデザイン性の高い製品の品位に関わる外観品質、傷や汚れなどが機能に関わる精密部品などの検査に用いられている。HSI計測では、2020年11月に買収したSpecim, Spectral Imaging(以下、Specim)のHSI技術を基に、精細な画像分析、目に見えない物質混入の検出、分布の見分けといった多様な分野への展開を計画している。

 コニカミノルタのセンシング事業は、需要の見込まれる領域での買収によって顧客のバリューチェーンへの接点を増やし、必要な技術強化を戦略的に行うことで成長を果たしてきた。売上高は、2011年度の100億円から、現在は300億〜400億円の規模に拡大している。

 2012年のInstrument Systemsの買収によって光源色計測領域を強化し、2015年のRadiant Vision Systems(以下、Radiant)の買収はアジアにおけるバリューチェーン対応力の強化に加えて、民生機器向け外観計測技術や画像処理技術の取り込みによって自動車向け検査ビジネスが拡大し、その結果として2018年のEines Systems(以下、Eines)の買収につながっている。亀澤氏は、「2020年のSpecimの買収で、今後は安全、安心、衛生の領域に狙いを定めて、リサイクルや食品、製薬の検査の事業を拡大させる」と述べる。

センシング事業の売上高推移と事業買収の関係 センシング事業の売上高推移と事業買収の関係[クリックで拡大] 出所:コニカミノルタ

 今後の事業成長戦略としては、基盤となる光源色計測領域の顧客のバリューチェーンを深めて情報端末の部材の外観計測など縦方向に展開を広げる方向性がある。そして、先述した安全、安心、衛生の領域などで分析技術を柱に顧客を新たに広げていく横方向の方向性もある。HSIはそのための技術だが「今後必要となる技術やアセットはもう少し幅が広くなる可能性もある」(亀澤氏)という。

センシング事業の成長戦略 センシング事業の成長戦略[クリックで拡大] 出所:コニカミノルタ

 センシング事業が対象とする光・画像計測検査の市場規模は2020年時点で6000億円。このうち、光源色が400億円、物体色が420億円、自動車外観が50億円、HSIが150億円となる。2025年の市場規模は年平均約8%で成長し8700億円に拡大する見込み。光源色が年平均約5%成長の500億円、物体色が同4%成長の500億円で市場全体ほどは伸びないものの、自動車外観は同15%成長の100億円、HSIは同15%成長の300億円となるため、これら高成長の分野に注力したい考えだ。

センシング事業が対象とする市場の規模 センシング事業が対象とする市場の規模[クリックで拡大] 出所:コニカミノルタ
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