3Dコラボレーションやデジタルツインを加速する「Omniverse」とはセミナーレポート(1/3 ページ)

デル・テクノロジーズ主催セミナー「Workstation Masterclass - デジタルツインはこう攻めろ、最新ソリューションを知る」の講演内容から一部を抜粋し、「NVIDIA Omniverse」の概要や活用事例などを紹介する。

» 2023年01月25日 06時30分 公開
[八木沢篤MONOist]

 デル・テクノロジーズは2023年1月20日、顧客およびパートナー企業向けセミナー「Workstation Masterclass - デジタルツインはこう攻めろ、最新ソリューションを知る」を開催し、デジタルツインを実現するプラットフォームとして「NVIDIA Omniverse」(以下、Omniverse)を取り上げ、その概要や活用事例などについて紹介した。

 本稿では、エヌビディア エンタープライズマーケティング シニアマネージャーの田中秀明氏の講演「デジタルツインのプラットフォーム NVIDIA Omniverseの基本と事例」と、伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC) デジタルビジネス推進第2部 主任の鈴置昌宏氏の講演「NVIDIA OmniverseによるCADデータのデザインレビュー・デジタルツインへの応用」の内容をダイジェストでお届けする。

「NVIDIA Omniverse」とは? その基礎と活用事例

 最初のセッションに登壇した田中氏は、ここ数年注目を集めている「メタバース」の産業利用の可能性について、「インターネットの3D進化といえるメタバースの登場により、今までできなかったようなコミュニケーションの実現が可能になった。また同時に、3Dそのものが多くの産業で活用されている今、メタバースを使ってそれらを接続して利用していくということが現実のものになってきている」と述べる。

エヌビディア エンタープライズマーケティング シニアマネージャーの田中秀明氏 エヌビディア エンタープライズマーケティング シニアマネージャーの田中秀明氏

 このような世界観を実現するプラットフォームこそがOmniverseであり、田中氏は「Omniverseは現実と同じ世界を仮想空間に構築(デジタルツイン)するためのコアを提供するもので、工場などのデジタルツインだけでなく、3D設計などに代表されるようなデザインのコラボレーションといったものを仮想空間上で実現するためのプラットフォームである」と、そのコンセプトについて説明する。

 また、デザインコラボレーションを実現する上で欠かせない、Omniverseと3D CADや3D CGツールなどとの接続性、幅広い対応に関して、田中氏は「NVIDIAはGPUに代表される半導体ベンダーとして長年事業を展開してきた経緯もあるため、当初から多くのソフトウェアベンダーと密接な関係を築いてきた。そのような背景もあり、Omniverseでは各種業界で広く活用されている主要な3Dソフトウェアとの接続をサポートしている」(田中氏)とアピールする。

Omniverseに接続可能な3Dエコシステム Omniverseに接続可能な3Dエコシステム[クリックで拡大] 出所:NVIDIA

 現在、主要な商用3D CADや3D CGツールなどが続々とOmniverseに対応しているが、そうしたOmniverseの進化の背景には、リアルタイムレイトレーシングとAI(人工知能)アクセラレーションを備えた「NVIDIA RTX」テクノロジー、サーバ向けデータセンターGPU、標準データフォーマットと位置付けているUSD(Universal Scene Description)、そしてAIの発展といった“テクノロジーとの融合”が大きく影響しており、「これらの技術をベースにOmniverseが構築されている」(田中氏)という。

Omniverse Enterpriseについて Omniverse Enterpriseについて[クリックで拡大] 出所:NVIDIA

 企業利用向けに展開する「NVIDIA Omniverse Enterprise」(以下、Omniverse Enterprise)では、USDベースのコラボレーションを管理するデータベース的な位置付けの「Omniverse Nucleus」サーバによって仮想空間が構築され、それぞれ離れた場所にいるエンジニアやクリエーターらは、普段使い慣れているさまざまな3Dソフトウェアを用いて、Omniverseにアクセス(「Omniverse Connectors」でコネクト)し、USDフォーマットでの、異なる3Dソフトウェア間でのデータ互換性、リアルタイムでの共同編集作業(Live Sync)を実現する。また、出力用アプリケーションとしてはリアルタイムレンダリング可能な「Omniverse Create」やデザインレビューなどに適したビュワー「Omniverse View」が用意されており、これらを利用することが可能だ。

Omniverse Enterpriseの動作について Omniverse Enterpriseの動作について[クリックで拡大] 出所:NVIDIA

 「例えば、住宅のデザインの場合、離れた場所にいるクリエーター同士がそれぞれ異なる3Dソフトウェアを用いてOmniverseに接続すると、同じ仮想空間上で、一人は壁を、もう一人は台所を、さらにもう一人は家具をといったように、他の人の進捗(しんちょく)を確認しながら同時におのおのの設計作業が行える。従来のように1つの設計が終わってから次の設計に取り掛かるのではなく、同時に進められるようになる。こうしたコラボレーションを可能にするのがOmniverseの利点の1つだ」(田中氏)

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