先に言及したように、日本財団の無人運航船プロジェクトであるMEGURI 2040の一環として商船三井は内航大型カーフェリー「さんふらわあ しれとこ」と内航コンテナ船「みかげ」による自律運航の実証実験を実施している。
この実証航海では、「内航コンテナ船」と「内航フェリー」という特徴の異なる2隻で実験を行い、両船型の相違点や共通点を明らかにすることで、汎用性のある技術開発につなげるとともに、これまで開発してきた自動離着桟技術、自動避航システム、物標認識技術などの要素技術が実際の商業航路で問題なく動作し長時間の航海に耐えられるかの確認を行った。加えて、係船作業の自動化を目指したドローンによる係船実験などユニークなテストにも取り組んだ。
その結果、「さんふらわあ しれとこ」では世界で実施された無人運航の中で最長距離(2022年2月時点)となる約750km、航海時間約18時間にわたる正常動作が確認でき、「みかげ」ではローリング(横揺れ)角が30度を超える海況条件の厳しい“冬の日本海”でも、航路追従が正常に実施できることが確認されている。「みかげ」の着桟前アプローチでは航路幅100mの狭い水路を航行するという難しい条件での自律運航となったが、予定航路に沿って入港、着桟して無人ドローンの補助により係船も行っている。
実証航海の検証では、有人操船と比べて変針後における針路のブレがやや大きいことや有人の操船に比べて無駄な変針が多いことなど課題も抽出されているが、これらの修正を積み重ねることで精度がより高くなっていくことが期待されている。また、これも先に述べたように認知における精度については実証実験でも改善に取り組むべき課題として認識されたという。
海上法規への適合とそれに“関連”した「船乗りの技量のシステムへの落とし込み」についても課題として認識している。海上法規に自律運航技術を適合していく作業では「海上法規は定量的に数値で表現されていない」(佐竹氏)ことが問題になるという。
「どういう見合い関係なら、どれくらいの距離になって、どのタイミングで避ける、などということがはっきり書かれていない。衝突の恐れがある場合において、例えば右から横切る船を見たら右側にいる船舶を避けなさいというような大まかな部分しか書かれていないので、具体的な操船については船乗りの感覚によるところが大きい。この感覚は船の大きさ、内航船と外航船でそれぞれ異なる。そのためシステムに落とし込むことがとても難しい」(佐竹氏)
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