商船三井の自律運航船開発がいろいろと「すごい!」件 : 船も「CASE」 (3/3 ページ)
先に言及したように、日本財団の無人運航船プロジェクトであるMEGURI 2040の一環として商船三井は内航大型カーフェリー「さんふらわあ しれとこ」と内航コンテナ船「みかげ」による自律運航の実証実験を実施している。
実証航海に用いた内航カーフェリー「さんふらわあ しれとこ」(総トン数1万1410トン、長さ190m、航海速力25ノット)[クリックで拡大]
実証航海に用いた内航コンテナ船「みかげ」(総トン数749トン、長さ95.5m、航海速力13.4ノット)[クリックで拡大]
この実証航海では、「内航コンテナ船」と「内航フェリー」という特徴の異なる2隻で実験を行い、両船型の相違点や共通点を明らかにすることで、汎用性のある技術開発につなげるとともに、これまで開発してきた自動離着桟技術、自動避航システム、物標認識技術などの要素技術が実際の商業航路で問題なく動作し長時間の航海に耐えられるかの確認を行った。加えて、係船作業の自動化を目指したドローンによる係船実験などユニークなテストにも取り組んだ。
「みかげ」における自律運航技術実証航海におけるシステム構成と入力要素[クリックで拡大]
その結果、「さんふらわあ しれとこ」では世界で実施された無人運航の中で最長距離(2022年2月時点)となる約750km、航海時間約18時間にわたる正常動作が確認でき、「みかげ」ではローリング(横揺れ)角が30度を超える海況条件の厳しい“冬の日本海”でも、航路追従が正常に実施できることが確認されている。「みかげ」の着桟前アプローチでは航路幅100mの狭い水路を航行するという難しい条件での自律運航となったが、予定航路に沿って入港、着桟して無人ドローンの補助により係船も行っている。
「みかげ」で実施したドローンによる係船索ガイドロープの岸壁渡し作業[クリックで拡大]
実証航海の検証では、有人操船と比べて変針後における針路のブレがやや大きいことや有人の操船に比べて無駄な変針が多いことなど課題も抽出されているが、これらの修正を積み重ねることで精度がより高くなっていくことが期待されている。また、これも先に述べたように認知における精度については実証実験でも改善に取り組むべき課題として認識されたという。
海上法規への適合とそれに“関連”した「船乗りの技量のシステムへの落とし込み」についても課題として認識している。海上法規に自律運航技術を適合していく作業では「海上法規は定量的に数値で表現されていない」(佐竹氏)ことが問題になるという。
「どういう見合い関係なら、どれくらいの距離になって、どのタイミングで避ける、などということがはっきり書かれていない。衝突の恐れがある場合において、例えば右から横切る船を見たら右側にいる船舶を避けなさいというような大まかな部分しか書かれていないので、具体的な操船については船乗りの感覚によるところが大きい。この感覚は船の大きさ、内航船と外航船でそれぞれ異なる。そのためシステムに落とし込むことがとても難しい」(佐竹氏)
→その他の『船も「CASE」』関連記事はこちら
実用化に向けて開発が進む自律“帆走”技術の今
エバーブルーテクノロジーズは今も自律帆走技術の開発に取り組んでいる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的まん延による停滞はあったものの、実証航海とプロトタイプのブラッシュアップを積み重ねて、自律帆走だけでなく機動力を重視した機走(内燃機関もしくはモーターで動作する推進器による航行)をメインとした自律運航小型船舶も手掛けるなど開発領域を広げている。
400海里、40時間の実証航海で見えてきた無人運航の実力
日本財団が進めている無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」と、その支援を受けて無人運航船システムの開発を進めているDFFAS Projectコンソーシアムは、2022年2月26日〜3月1日にかけて実施した無人運航船実証実験に関する記者発表会を開催し、実証実験の概要と成果について明らかにした。
“船長の技”のクラウド共有で、海のデジタルトランスフォーメーションを実現する
日本気象協会とアイディアが2021年9月27日、「海事デジタルトランスフォーメーション」を推進するパートナーとして協業することを発表した。
自律運航船の遠隔監視・操船を担う「フリートオペレーションセンター」に潜入!
海事企業など国内30社が参画する「Designing the Future of Full Autonomous Ship プロジェクト」の「フリートオペレーションセンター」が、2021年9月2日に竣工した。自律運航船の航行を主に遠隔監視と遠隔操船で支援する陸上拠点で、複数の自律運航船を遠隔監視できる「統合表示ブロック」と個別に遠隔操船できる「非常対応ブロック」で構成される。また、自律運航船に搭載する舶用機器とシステムの運用試験を陸上で実施できる想環境も用意した。
自律運航船の複雑怪奇な法的立場、自動運転車のように議論が進む
「中の人には常識だが外の人はほとんど知らない」船舶運航に関する法律の視点から、自律運航船の法的制約とあいまいな部分、そして、IMOの総会「MSC103」で示された内容で今後自動運航関連法がどのように変わるのかを解説する。
人手不足と高齢化の漁業を救う、「自動着桟システム」の最前線
ヤンマーは、「最大の豊かさを最小の資源で実現する」というテクノロジーコンセプトを掲げ、そのコンセプトを実現する研究開発テーマを定めている。マリン関連の研究開発テーマとしては、海域調査やインフラ点検などに貢献する「ロボティックボート」、1本のジョイスティックだけで操船できるようにする「ジョイスティック操船システム」「自動航行」と「自動着桟」、そして、船舶特有の動揺を抑制する「サスペンションボート」に取り組んでいる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.