コンシューマモデルのeSIMプロファイルのプロビジョニングでは、eSIMプロファイルのダウンロードや書き込みを行う機能として標準化されているLPA(Local Profile Assistant)を用いる。新たに考案した技術はこのLPAについて、アクティベーションコードの入力などインタフェース部分を担当する機能となる「LPA App」と、eSIMとリモートプロビジョニング用サーバ間の通信を中継するための機能「LPA Bridge」の2つに分割した。
その上で、IoT機器にeSIMを設定するためにエンドユーザーが用いる、スマートフォンやPCなどのリッチUIを備える機器にLPA Appを、IoT機器にLPA Bridgeを実装する。eSIM設定用機器にインストールされたLPA AppとIoT機器に実装されたLPA Bridgeは、一体となってLPAに相当する機能として振る舞うため、GSMAの規定するコンシューマモデルに基づきeSIMプロファイルをデバイスで利用することが可能になるという仕組みだ。
なお、LPA Bridgeを組み込むIoT機器としては、LinuxベースでWi-FiやBluetooth、イーサネットなどのローカル通信機能を備え、キャリア通信のための汎用通信モジュールも搭載することが想定されている。LPA Bridgeのソフトウェア容量はそれほど大きくない上に、eSIMプロファイルを取り扱うときだけ利用するため、IoT機器の動作を重くするなどの影響は与えない。「既存のIoT機器に対して、物理的な改造を行うことなく、LPA Bridgeを移植するだけでコンシューマモデルのeSIMの世界観を体験できる」(IIJ MVNO事業部 ビジネス開発部 シニアエンジニアの三浦重好氏)という。
IIJとしては、IoT機器メーカーとの間でLPA Bridgeの活用に向けたPoCを進めることで、IoT機器のビジネスモデル変革の可能性を模索したい考えだ。これまでIoT機器メーカーが事業を展開する場合、自身が通信キャリアと回線契約を結んだ上で、エンドユーザーにIoT機器の利用や通信費用を含めたサブスクリプションによる課金を行うなどしてサービスを提供する必要があった。この場合、料金回収からビジネスモデルの立案、顧客管理/サポートなども手掛けなければならない。また、エンドユーザーから見ても、回線契約を自由に選べないなどの制約があった。
ここで、コンシューマモデルのeSIMを利用できるようになれば、エンドユーザーは自由に通信キャリアやプランを選択可能になる。IoT機器メーカーにとっても、通信料金の回収や顧客管理を行う必要がなくなり、IoT機器の開発やビジネスモデルの立案に注力できる。三浦氏は「例えば、ポータブルゲーム機の通信機能はWi-Fiの利用を前提としているが、屋外などで利用する際には、1日当たり10GBの通信容量など必要に合わせて通信キャリアやプランを選べるようになる。LPA BridgeのPoCでは、こういった新たなビジネスモデルを模索したい」と説明する。
なお、LPA Bridgeの技術は特許申請中だが「IIJで抱え込むのではなく、eSIMの可能性を広げるためにも、同業他社が希望する場合にオープンに展開していきたい」(三浦氏)としている。
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